世界初、「ひさき」がとらえた木星磁気圏の電子の流れ
【2014年10月2日 JAXA】
2013年9月にイプシロンロケットで打ち上げられた惑星分光観測衛星「ひさき」が、木星の衛星イオの火山から放出されるガスが木星の周りにドーナツ状に分布した「イオプラズマトーラス」を極端紫外線で観測した。木星磁気圏の外側からやってくる高温電子が宇宙空間でイオン化した火山ガスに衝突するようすを見ることで、高温電子の温度や密度を調べたのだ。
その結果、イオプラズマトーラスには外部磁気圏からやってきた高温電子が数%の割合で存在すること、磁気圏の外側から内側へ電子がとても効率的に輸送されていることが明らかになった。これらの電子が磁気圏内側に供給され、高エネルギー粒子の集まる放射線帯を形成維持しているという、従来の有力な学説の証拠が初めて得られたことになる。
木星磁気圏の中を木星本体に向かって流れてくる高温電子(提供:JAXA)
〈参照〉
- JAXA: 太陽系最大の粒子加速器(木星磁気圏)を解剖する -「ひさき」のスペクトル診断による木星周辺宇宙空間の理解-
- Science: Evidence for global electron transportation into the jovian inner magnetosphere 論文
〈関連リンク〉
- JAXA: http://www.jaxa.jp/
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