史上初の快挙、フィラエが彗星表面に着陸
【2014年11月13日 ヨーロッパ宇宙機関】
欧州の彗星探査機「ロゼッタ」の着陸機「フィラエ」(*1)は12日17時半ごろ(日本時。以下同)にロゼッタから分離され、7時間後の13日0時半ごろ、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面、着陸ポイントである「アギルキア」に到達した。約5億kmの距離、28分の時を経て着陸の確認信号が届いたのは1時3分。ドイツ・ダルムシュタットの欧州宇宙運用センター(ESOC)の管制室では信号確認とともに歓声や拍手がわき起こり、彗星を発見したクリム・チュリュモフさんやメディア関係者、応援キャンペーンで招待されたファンなど同センターに集まったゲストも歴史的な瞬間を分かち合った。
フィラエ着陸の信号を確認し喜ぶ運用チーム。歓喜の瞬間はESAウェブサイトの動画の2時間3分ごろに見ることができる(提供:ESA)
史上初の彗星着陸という快挙の一方、フィラエを地表に固定するくい(銛)の打ち込みが実施されていないという不具合も起こっている。彗星表面の重力はとても弱く、塵やガスを表面から放出する彗星の活動が今後フィラエの体勢に影響するおそれもある。運用チームではフィラエの状態を確認して原因を究明し、打ち込みを再度試みるなどの対策を検討しているという。
分離直後のフィラエが撮影した画像には、10年間ともに旅をしてきた母船の太陽電池パネルが写っていた(提供:ESA/Rosetta/Philae/CIVA)
彗星地表に向かうフィラエをロゼッタが撮影。フィラエとロゼッタがお互いを写した画像はフィラエの降下途中に地球に送信され、着陸の報を待つ全世界の人々に早くも公開された(提供:ESA/Rosetta/MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/SSO/INTA/UPM/DASP/IDA)
彗星表面到達前、およそ3kmの位置からフィラエが撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(提供:ESA/Rosetta/Philae/ROLIS/DLR)
1: Philaeのカナ表記について、ヨーロッパの研究者たちの呼び方に近いのは「フィレ」「フィレー」となるが、アストロアーツニュースでは名前の由来となった島や神殿の日本における慣習的な表記(エジプト大使館など)に従って「フィラエ」と表記している。
〈参照〉
- ESA:
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関: http://www.esa.int/
- Twitter:
- アストロアーツ:
- 星空ガイド: 天文の基礎知識 彗星
- 投稿画像ギャラリー: 彗星・小惑星
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
- 「The Greatest Comets in History」
- 「彗星衝突計画 ディープ・インパクト」 DVD
〈関連ニュース〉
- 2014/11/12 - フィラエ分離成功 史上初彗星着陸の報は深夜1時ごろ
- 2004/10/17 - 探査機ロゼッタ、彗星と自撮り2ショット
- 2014/10/06 - 迫力満点、「ロゼッタ」が間近で見た彗星ジェット
- 2014/09/17 - ロゼッタの着陸機フィラエ、降下場所は彗星の「アヒルの頭」
- 2014/08/27 - 史上初の彗星着陸に向け、探査機ロゼッタが調査中
- 2014/08/06 - 探査機ロゼッタがチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着
- 2014/07/18 - チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星はアヒル型
- 2014/07/01 - チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星、1秒にコップ2杯の水を放出
- 2014/05/20 - 探査機ロゼッタがとらえたチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
- 2014/01/21 - 画期的彗星探査に向け、探査機ロゼッタが冬眠から復帰
- 2011/06/09 - 彗星探査機「ロゼッタ」、2014年までしばし冬眠へ
- 2008/09/08 - 宇宙のダイヤをかすめた彗星探査機
- 2007/11/19 - ESAの彗星探査機ロゼッタがとらえた夜側の地球
- 2004/06/30 - 地球の大量の水は、どこからきたのか?
- 2004/03/01 - 彗星探査機ロゼッタの打ち上げ成功
〈関連製品・商品〉
関連記事
- 2024/11/29 星ナビ1月号は「星のゆく年くる年」と「星空ハンドブック2025」
- 2024/10/11 2024年10月 紫金山・アトラス彗星が4等前後
- 2024/10/04 10月11日にYouTubeライブ「ステラナビゲータで紫金山・アトラス彗星を100倍楽しむ!」
- 2024/09/30 公式ブログ:【ステラショット3】彗星を留めて撮影!「メトカーフガイド」新搭載
- 2024/09/20 2024年9月 紫金山・アトラス彗星が3等前後
- 2024/09/18 公式ブログ: 【思うがままにならない】○○だった彗星たち【それが魅力】
- 2024/09/18 【特集】紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)
- 2024/04/11 17日に「ステライメージで彗星画像処理」ライブ配信
- 2024/03/28 4月3日にYouTubeライブ「ステラナビゲータでポン・ブルックス彗星を楽しむ!」
- 2024/03/25 2024年4月 ポン・ブルックス彗星が4等前後
- 2024/03/21 ほうき星を見て、撮って、処理する:彗星写真を仕上げる(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/18 ほうき星を見て、撮って、処理する:メトカーフコンポジットで尾や頭部を描出(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/14 ほうき星を見て、撮って、処理する:ステラショットで彗星を拡大撮影(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/12 ほうき星を見て、撮って、処理する:彗星拡大撮影の計画を立てる(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/08 ほうき星を見て、撮って、処理する:彗星星景撮影の計画を立てる(【特集】ポン・ブルックス彗星)
- 2024/03/08 2024年3月 ポン・ブルックス彗星が5等前後
- 2024/02/07 【使いこなし講座】あなたの知らないステラナビゲータシリーズ~彗星がやってくる~
- 2024/01/29 リュウグウに彗星の塵が衝突した痕跡を発見
- 2024/01/24 2023年度日本天文学会各賞の受賞者発表 板垣さん、西村さんら
- 2023/11/28 彗星コマ中のアンモニア分子の起源