超新星1987Aの残骸に中性子星の兆候

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オーストラリアの研究チームによる電波観測で、28年前に出現した超新星1987Aの残骸から未知の放射が見つかった。超新星爆発の跡に作られる中性子星からのものかもしれない。

【2014年12月25日 ICRAR

SNR 1987Aは、16万光年彼方の矮小銀河「大マゼラン雲」にある超新星残骸だ。1987年2月に出現した超新星は2.9等まで明るくなり、その後に残る残骸は今でも数多くの研究の対象となっている。

Giovanna Zanardoさん(ICRAR:電波天文学研究国際センター)らが今回、その残骸の中に中性子星(重い星が崩壊した後に残る高密度天体)と思われる天体の兆候を発見した。超新星残骸は内部で起こるさまざまな放射で輝いているが、チリのアルマ望遠鏡とオーストラリア望遠鏡コンパクトアレイを用いて遠赤外線と電波での観測を行い、塵の放射を差し引いたところ、これまで見られなかった放射が残った。これが、中性子星の強い磁場によって周囲に吹く「パルサー風」なのかもしれないという。長年1987Aで捜索が行われてきた中性子星の兆候が見つかったのは初めてのことだ。

超新星1987Aの残骸
超新星1987Aの残骸の光から、さまざまな放射を取り除いて浮かび上がった光(右)。これが中性子星周囲のパルサー風のもやと考えられる。クリックで拡大(提供:ATCA & ALMA Observations & data - G. Zanardo et al. / HST Image: NASA, ESA, K. France (University of Colorado, Boulder), P. Challis and R. Kirshner (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics))

また別の研究では同じくICRARのToby Potterさんが、電波観測で見られる1987Aの非対称な姿の謎に迫った。爆発の非対称性や周囲のガス組成の条件を変えながら、広がる衝撃波の立体シミュレーションを行ったところ、衝撃波の片側がもう一方に比べて速く広がる、観測通りの姿を再現することに成功した。超新星残骸が形成されるしくみや爆発の周囲環境について、理解を深める成果が得られている。

超新星の衝撃波が非対称に広がるシミュレーション
超新星の衝撃波が非対称に広がるシミュレーション。リリース元で動画を見ることができる(提供:ICRAR)

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