VERAプロジェクトでミラ型変光星の周期光度関係を高精度に確立
【2015年1月21日 国立天文台VERA】
ミラ型変光星など長周期変光星は、絶対等級と変光周期との間に比例関係がある。この周期光度関係を用いると変光星までの距離がわかるのだが、そのためには関係を精度良く求めておく必要がある。何らかの方法で距離を正確に測定すれば、周期光度関係の精度を向上させられる。
鹿児島大学の中川亜紀治さんらの研究チームは2003年から2006年にかけて、電波干渉計の手法で天体の距離と運動を高精度に測定し天の川銀河の3次元立体地図を作る「VERAプロジェクト」で、約370日周期で明るさが変わるミラ型変光星「うさぎ座T星」の水メーザー観測を行った。
その結果、うさぎ座T星の年周視差が3.06±0.04ミリ秒と測定され、太陽系からの距離が約327pc(約1070光年)と求められた。さらに、これらの値や他の変光星の観測結果から、ミラ型変光星の周期光度関係が精度良く導かれた。
今後もVERAによって多くのミラ型変光星の距離を決定し、高精度な周期光度関係を確立することが期待されている。
〈参照〉
- 国立天文台VERA: 晩期型のミラ型変光星 T Lep の周期光度関係を確立
- arXiv.org: A. Nakagawa, 2014, PASJ, 66, in press, VLBI Astrometry of AGB Variables with VERA - A Mira Type Variable T Lepus - 論文
〈関連リンク〉
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