塵の環に囲まれた30億歳の白色矮星

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市民参加型プロジェクトにより、周囲に塵の環が広がっている白色矮星が発見された。年齢は30億歳と見積もられており、従来の理論では環が消失しているはずの高齢だ。

【2019年2月27日 NASA

NASAの赤外線天文衛星「WISE」のデータから新天体を捜索する市民参加型プロジェクト「Backyard Worlds: Planet 9」により、さんかく座の方向約145光年彼方に位置する、赤外線で明るく輝く天体「LSPM J0207+3331」(以後J0207)が発見された。

米・ハワイのW.M.ケック天文台での追加観測でこの天体の性質を詳しく調べたところ、J0207の正体は白色矮星であり、周囲を取り囲む塵の環から赤外線が放射されているらしいことが明らかになった。

白色矮星「LSPM J0207+3331」
白色矮星「LSPM J0207+3331」。右は拡大図(提供:Backyard Worlds: Planet 9/NASA’s Goddard Space Flight Center)

太陽のような軽い恒星は一生の終期に膨張して物質を放出し、中心部が白色矮星として残される。白色矮星は時間の経過とともに冷えていくので、表面温度を調べると年齢を推定することができる。J0207の表面温度は摂氏約5800度で、年齢は約30億歳とみられている。これは、塵に取り囲まれた白色矮星としては、現在知られているもののなかで最も低温で最も古い(高齢の)天体だ。これまでに見つかっていた、塵に取り囲まれた白色矮星で最も古い天体は、年齢が約10億歳のものだった。

塵の元になったのは、星の周りにあった惑星や小惑星などだと考えられている。星が膨らんでいくと、星の近くにある惑星は飲み込まれてしまうが(地球も50億年後には膨らんだ太陽に飲み込まれるかもしれない)、外側にあった惑星は、さらに外側へと移動して生き残る。軌道が外に広がるのは、星が質量を失って軽くなり、重力が小さくなるためだ。

こうして生き残った外側の小惑星や彗星が、同様に生き残った惑星の重力の影響を受けて軌道を乱し白色矮星のほうへと落ちていくと、白色矮星の潮汐力によって破壊され、その残骸が星の周りに環状に広がるようになる。

LSPM J0207+3331の想像イラスト
LSPM J0207+3331の想像イラスト。白色矮星の周囲に塵の環が形成されている。左下は破壊された小惑星の残骸(提供:NASA's Goddard Space Flight Center/Scott Wiessinger)

こうした塵は最終的にはすべて白色矮星の表面に落ちてしまうため、長い年月が経つと環は消えてなくなってしまうはずだ。つまり、30億歳の白色矮星J0207の周りに塵の環が残っているのは奇妙であり、理論やモデルを考え直す必要があるかもしれない。「塵の環に物質を供給するプロセスがどのようなものであれ、J0207ではそのプロセスが数十億年というタイムスケールで起こっていることになります。一方で、これまでに考えられてきた白色矮星を取り巻く環を説明するモデルのタイムスケールは1億年ほどしかありません。J0207は、惑星系の進化に関する仮説に対して大きな問題を突き付けているのです」(米・宇宙望遠鏡科学研究所 John Debesさん)。

J0207には環が複数存在している可能性も考えられており、今後の観測研究でさらに詳しいことがわかると期待されている。