天の川銀河の中心から届く、超高エネルギー宇宙線

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ナミビアのヘス望遠鏡による長年のガンマ線観測により、非常に高エネルギーの宇宙線を生み出している領域が天の川銀河の中心に存在するらしいことが初めて明らかになった。

【2016年3月18日 CNRS

地球には宇宙線と呼ばれる、陽子、電子、原子核などが加速された高エネルギー粒子が絶えず降り注いでいる。宇宙線は電気を帯びており、天の川銀河内の恒星間磁場によって大きく曲げられるため、その発生源を直接特定することはできないが、宇宙線が周囲の光やガスと相互作用して生成したガンマ線は磁場の影響を受けずにまっすぐ進むので、その起源をたどることが可能だ。

高エネルギーのガンマ線が地球に届くと、上層大気中の分子と相互作用して、チェレンコフ光を放射する二次粒子のシャワーが発生する。このチェレンコフ光を検出することによって、過去30年間に100個以上の高エネルギーガンマ線源が確認されており、約100テラ電子ボルト(可視光線の100兆倍)ものエネルギーを持つ宇宙線が、超新星残骸やパルサー風星雲などの天体で生成されていることがわかっている。

一方で、天の川銀河内では少なくとも1ペタ電子ボルト(=1000テラ電子ボルト)の宇宙線が生成されるはずだと考えられているものの、そうした非常に高いエネルギーを持つ宇宙線源は検出されていなかった。

アフリカ南西部のナミビアに設置されたヘス望遠鏡では、天の川銀河の中心領域の地図作りを、高エネルギーのガンマ線観測で行ってきた。その10年以上にわたる観測から、ガンマ線が銀河の一番奥からやってくる宇宙線によって生成されているものであり、宇宙線源は銀河中心の超大質量ブラックホールとみられることが明らかになった。ペタ電子ボルトにおよぶ宇宙線加速の直接的な証拠が初めて示されたものだ。

ヘス望遠鏡は最初の3年間で、銀河の中心領域に非常に強力なガンマ線の点源を見つけただけでなく、約500光年にわたる領域内の巨大な分子雲から放射される広がったガンマ線放射もとらえた。分子雲が光速に近い速度の宇宙線にさらされ、分子雲内の物質と相互作用してガンマ線が生成されているようだ。

天の川銀河の中心を取り囲む巨大分子雲のイラスト
天の川銀河の中心を取り囲む巨大分子雲と、そこからガンマ線が放射される様子を表したイラスト(提供:Dr Mark A. Garlick/ H.E.S.S. Collaboration)

さらにその後の観測と解析で、銀河中心で宇宙線にエネルギーが供給されるプロセスに光が当てられた。「天の川銀河の中心33光年以内に、少なくとも1000年間、陽子に約1ペタ電子ボルトものエネルギーを持たせる天体が存在します」(仏・サクレー原子力庁センター Emmanuel Moulinさん)。

「ペタ電子ボルトのエネルギーを持つ陽子の源は、天の川銀河の中心に位置する超大質量ブラックホール「いて座A*(エー・スター)」と考えるのがもっともらしいでしょう」(マックス・プランク原子核物理学研究所 Felix Aharonianさん)。

もし、いて座A*の活動が過去にもっと活発なものだった場合、現在地球で観測される銀河宇宙線の大部分の起源はいて座A*だと言える。それが本当なら、なぞの粒子の起源に関する長年の論争に大きな影響を与えることになるだろう。

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