火星周回探査機「TGO」、試験撮影好調
【2016年11月30日 ヨーロッパ宇宙機関】
10月19日に火星周回軌道に入った欧・露のミッション「エクソマーズ」の周回探査機「TGO」は現在、火星上空230~310km、1周9800kmの楕円軌道を4.2日かけて周回している。11月20~28日にかけて、搭載されている観測機器を火星到着後初めて試験稼働させた。
TGOの主目的は大気の1%以下を占めるガス(メタン、水蒸気、一酸化窒素、アセチレンなど)の詳細な一覧を作成することで、なかでも興味深いのは、地球上では主に微生物の活動によって作られるメタンだ。メタンはさらに、量こそ少ないものの熱水作用のような地質学的プロセスでも作られることが知られている。
機器のうち、「Atmospheric Chemistry Suite」は火星の大気の大部分を占めている二酸化炭素に焦点を当てて観測を行った。また「Nadir and Occultation for Mars Discovery instrument」は水を観測し、どちらの装置も高感度で大気のスペクトルを取得できることを示した。さらに、火星の表面における中性子の流れを計測する中性子検出器「FRENDO」は、火星の表層やその地下の組成を調べることができ、とくに水や氷が注目されている。
一方、カラー撮像器「Colour and Stereo Surface Imaging System」は11月22日の接近飛行で11枚の画像を取得し、上空235kmからヘベス谷をとらえたり、ノクティス迷路の一部の立体画像を作成したりしている。
来年の終わり頃には、TGOは高度400kmのほぼ円形軌道上を周回するようになる。「機器が順調でとても幸せです。このすばらしい周回機が今後どんなことを成し遂げてくれるのか楽しみです」(TGOプロジェクトサイエンティスト Håkan Svedhemさん)。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関: http://www.esa.int/ESA
- ロスコスモス: http://www.roscosmos.ru/
- アストロアーツ:
- 投稿画像ギャラリー: 2016年 火星
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
関連記事
- 2024/07/24 火星大気中の塩化水素を全球で検出
- 2024/06/17 火星の赤道地方の山頂で霜を検出
- 2021/02/18 火星の大気から塩化水素を検出
- 2019/02/14 ESAの火星探査車に「ロザリンド・フランクリン」と命名
- 2018/05/07 エクソマーズのオービターが上空からとらえた朝の火星
- 2017/03/31 火星探査車「エクソマーズ2020」の着陸候補地点が決定
- 2016/12/09 「TGO」が鮮明にとらえたフォボス
- 2016/11/07 スキアパレッリ衝突現場のカラー画像
- 2016/10/24 着陸実証機「スキアパレッリ」は火星に激突の可能性
- 2016/10/20 「エクソマーズ」、TGOは無事火星周回軌道へ、着陸機は通信途絶か
- 2016/03/15 欧・露の探査ミッション「エクソマーズ」が火星に向け出発