トランジット法で「地球」を検出できる系外惑星
【2017年9月14日 RAS】
これまでに発見された太陽系以外の惑星、いわゆる系外惑星の個数は4000個に迫ろうとしている。その大半は、地球から見て系外惑星が主星の手前を通過する「トランジット現象」を利用し、主星の光がわずかに暗くなる様子の観測から惑星を検出したものだ。
では反対に、系外惑星から見て太陽系の惑星が太陽の手前を通過するトランジット現象で、異星人は太陽系の惑星を見つけられるだろうか。英・クイーンズ大学のRobert Wellsさんたちの研究チームはこの問題について、太陽系の惑星検出に最適な位置にある系外惑星の数や、それらの惑星上から検出され得る太陽系内の惑星の数などを調べた。
研究チームによると、太陽系の惑星によるトランジットを観測できる既知の系外惑星は68個で、そのうち9つからは地球のトランジットが見えるという。ただし、いずれの惑星も生命の存在を許す環境ではなさそうだ。さらに、生命を育める環境が存在し、かつ地球の検出に適した位置にある、現時点では未発見の惑星の数は10個と計算されている。
「少なくとも1つの惑星のトランジットを観測できる確率は、およそ40分の1です。2つの惑星だとその約10分の1、3つの惑星ではさらにその10分の1になります」(クイーンズ大学 Katja Poppenhaegerさん)。
また、トランジット法を利用して外から太陽系の惑星を観測すると、木星型惑星である木星、土星、天王星、海王星よりも、地球型惑星の水星、金星、地球、火星の方がはるかに見つけやすいことがわかった。「主星の前を通過する惑星が大きければ大きいほど、より多くの光が遮られますが、惑星が主星にどれほど近いかということのほうが重要な要素なのです」(Wellsさん)。
系外惑星探査衛星「ケプラー」が現在実施中のK2ミッションでは、地球の公転軌道面に沿った領域、つまり太陽系惑星のトランジット現象を観測するのに適した領域にある、多くの恒星の周りが調べられている。人類が持つ現在の技術水準で地球を検出可能な、生命を育める環境が存在する惑星は今のところ1つも発見されていないが、今後の観測や研究の進展に期待がかかる。
〈参照〉
- RAS News&Press:Are we being watched? Tens of other worlds could spot the Earth
- MNRAS:Transit Visibility Zones of the Solar System Planets 論文
〈関連リンク〉
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