今月も、先月に引き続き、カメラのレンズを夜空に向けてみましょう。弊社運営のスターウオッチングツアーでも、参加されたお客様がご自分のカメラで夜空を撮りたいとお申し出になります。
しかし、先月も書きましたが、ほとんどの方が星を撮影されたことがなく、コンパクトカメラの「夜景モード」や「星空モード」もご存知ではありません。ツアーの最中に撮影にトライしたくても、結局ツアーが終わるまでに撮影準備ができる方はほとんどおられません。
中には、デジタル一眼レフカメラをお持ちの方もいますが、結局ISO感度変更や、シャッターを開けっぱなしにするバルブやシャッタースピード、露出の設定方法も理解していないようです。
今回は、その設定がわかっていると仮定してお話します。
まず固定撮影ですが、長時間露光を行なうのであれば、カメラ内部のバッテリーだけでは不十分です。とはいえ、途中でバッテリーを交換することもできません。カメラ内部のバッテリーだけでは心配な時に、携帯電源や外部電源が便利です。
次に、追尾撮影です。星の動きに同調させてカメラを動かせば良いのですが、一つだけ必要なものがあります。それが極軸望遠鏡付き赤道儀架台です。赤道儀望遠鏡を入手したら、そこに極軸望遠鏡をオプションで取り付ければ良いのです。
その後は、極軸望遠鏡の説明書を見ながら、北極星を極軸望遠鏡の視野内に導入し、天の北極に合わせます。そう言えばニュージーランドに来て19年。北半球での極軸の合わせ方を忘れてしまいました。今では南半球での極軸合わせが、当たり前になってしまいます。
星の追尾も電動の時代になりましたが、私が学生の頃は当然手動ガイド。86年に参加した「ハレー彗星観測ツアー in ニューカレドニア」でも手動ガイドでした。オートガイダーもの価格も手ごろになった今では、手動ガイドで頑張ったころをなつかしく思われる方もたくさんおられるでしょう。
さて、その南半球での極軸合わせですが、少しコツを掴めば、翌日から楽勝で追尾撮影の準備ができます。しかし、しかしです。天の南極付近には、北極星の様な明るい星がありません。あるのは5等星と6等星の4つの星がつくる台形だけで、めちゃくちゃ暗いのです。それを極軸望遠鏡のスケールに合わせて導入するわけですが、とにかく4つの星とも暗いので、なかなかスケールに合わせることができません。
しかも、極軸望遠鏡に付属している明視野照明装置を作動させると、スケールパターンがクッキリと浮かび上がってしまい、今度は4つの星が視野内から消えてしまいます。そうなんです。明視野照明装置は、北極星の様な明るい星を使っての極軸導入用に開発されたもので、決して5等星以下の星を使った導入には適しておりません。
そこで開発されたのが、可変明視野照明装置。私も欲しいこの装置は、スケールも見えて、さらに4つの星も見えるように明るさを調整できるものだとか・・・。これなくして、南半球での極軸合わせは大変苦労すると思って下さい。
しかし私は、明るさを変えられない照明装置を今でも使っています。それは、以下の様な理由があるからです。
- 赤道儀架台を適当に置いた瞬間に極軸望遠鏡視野内に、この4つ星がつくる台形が入っていること。
- わざとパワーのなくなった単3型電池を使って、心細いほど暗い明視野照明を自ら作り出していること。
それでも電池が時々パワーを取り戻したりして、明視野装置がスロットル全開の明るさになり、一人で驚いてしまうことも多々あります(笑)。そんなこんなで極軸合わせは、星を撮影する我々にとって最も苦労する事柄なのです。しかし慣れれば、日時を無視してとにかく台形を導入すれば良いのです。
この八分儀座の台形を見つけるには、南十字座のα星とγ星を線で結んで、α星方向に約4.5倍伸ばせばたどり着けると言われていますが、この方法は大雑把過ぎてお勧めできません。それよりも小マゼラン星雲から探し出す方が簡単です。小マゼラン星雲からみなみじゅうじ座方向に目をやると、このあたりでは、もっとも明るいみずへび座のβ星があります。なお進んでいくと、八分儀座のγ星の3つ星があり、その先に台形があります。この4つの対象物は殆ど同じ距離にあり、これ知っていれば一発で極軸望遠鏡の視野内に台形を入れることができるはずです。おっとその前に赤道儀の緯度を、その地点の南緯度に合わせておいて下さい。
これで最大の難関はクリアされたも同然。あとは極軸望遠鏡のスケールに4つの星を合わせるだけです。ご苦労様でした。思う存分撮影をお楽しみ下さいませ。そうそう、モータードライブのスィッチを南半球仕様に変更しておくのを忘れずに。それと星は天の南極を中心に時計回りに動きますので、ガイド星の選択もお間違えなく!またニュージーランドは欲しい商品が手に入りにくい環境にあります。電池もフィルムもコンパクトフラッシュやSDカードも高価です。しかも販売店が郊外にあるため、わざわざタクシーを飛ばして買いに行かねばなりません。また閉店時間が早く、いいことが一つもありません。必ず日本からご持参下さい。
しかし、どうしても持って行きたくない物がありますね。それはバランスウェイトです。近頃は原油の高騰で航空機料金も高くなり、規定重量を超過した時は問答無用で超過料金を徴収されてしまいます。持って行きたくないですねぇ。仕方がないので、現地で大きな石を袋に詰め、これを代役に使うしかないでしょうね。
それでは最後に、必ず撮りたくなる構図を叶えるレンズをお知らせしておきましょう。その構図とはリギルケンタウルス〜南十字〜エータカリーナ星雲というお決まりのものです。銀塩カメラとフルサイズデジタル一眼レフカメラだと50ミリ標準レンズかそれよりも広角がいいでしょう。35ミリがベストだと思います。その他のデジタル一眼レフカメラだと20〜24ミリですね。この構図を天頂近くで撮るなら、5月の連休にお越し下さい。午後8時頃、南十字が天頂付近に陣取っています。11月の真夜中に下方経過する南十字もおつなものですが・・・。
次回はこの続きを書いてみたいと思います。夏場でも夜間は10度前後まで冷えるクィーンズタウンでは、毎日透き通った夜空が見られます。