南緯45度の星空案内人
第13回 「永住権取得で、もれなく満天の星」

Writer: 米戸実氏

《米戸実プロフィール》

1964年大阪生まれ。子供の時から南半球に興味を持ち始め、ハレー彗星はニューカレドニアへ。卒業後にニュージーランドへ冒険旅行に出て、旅行と南半球にすっかりはまる。両国の旅行会社に勤務し、現在クイーンズタウンでスターウオッチングツアーを運営する傍ら、オーロラ撮影に熱中。

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さて皆さんは、どれくらいニュージーランド(以下NZ)という小国のことをご存じでしょうか。私は親不孝者で、大学を卒業してすぐに日本を飛び出し、今はNZで、(文字通り、女王陛下が住むに相応しい)クィーンズタウンという街に住んでおります。

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この連載で何度も書いておりますが、若いころは何度も栄転話を頂きました。しかし仕事以外に重きを置く小生にとっては、住む場所の環境がかなり重要なのです。今では庭に出て夜空を見上げ、少し目が暗さに慣れてくれば、肉眼で見える限界等級の6等星まで簡単に見ることができます。

天の南極を探すときには、便利なはちぶんぎ座の台形が肉眼で見えるので、南半球の極軸合わせに苦労することがありません。まあ一言つけ加えさせていただくとすれば、このはちぶんぎ座の台形が5〜6等星なので、極軸望遠鏡の明視野照明装置の明るさが調整できないと、かなり辛いですが…。

しかしそんな苦労なんぞ、追尾撮影で夜空の写真を撮ってしまえば簡単に忘れてしまいます。写っている星の数が格段に違いますから。前回日本に帰省した折、テレビのお天気コーナーを見ている時のこと。キャスターの男性が「今日は一日中快晴の良いお天気でしたねぇ」と言っていました。私はその日、空が白く霞んで青空なんぞどこにも見えていなかったので、てっきり全天が雲に覆われていたと思い、「えっ!あれで?」とテレビに向かって突っ込みを入れていました。

確かにそうです。今では西の空に低くなってきましたが「天狼」ことシリウスが、こんなにきれいな星だと知ったのは、NZに来てからでした。20年以上前の話ですが、私が大学の天文同好会に所属していた時に見たシリウスは、こんなに美しく輝いていませんでした。それほど日本の空は汚れてしまったのだと感じました。

さてNZの永住権ですが、私は今から13年前の1995年に申請を行い、翌年の5月に取得することができました。同じ年の4月には嫁さんをもらい、薔薇色の人生をスタートしていました。実はこのころに大都市への栄転話がありました。しかし、クィーンズタウンで挙げた結婚式に地元の方々が列席してくださったことから、この街を本拠地として活動した方がビジネスはやり易いと判断しました。結局、入社して3年も経たないのに栄転という次のステップを断りました。

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その後は、仕事を通じて充実した7年間を過ごし、旅行業界での経験も積むことができました。2000年には転職し、この業界での経験を着々と築き上げることができたわけです。2001年3月31日には、フレア爆発による衝撃波が地球に到達し、クィーンズタウン上空に七色のオーロラが出現しました。

さて、NZの永住権を取得すれば、もちろん無期限で定住が許されます。2年や3年の労働許可証での滞在だと、あっという間に滞在期限がやってきて、再び高額な申請料を払って延長を申し出るか、はたまた日本に帰国するのか…と非常に不安定な精神状態にもなり得ます。延長を申し出ても必ず許可される保証はどこにもありません。

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今はお陰様で「好きなだけNZにいて下さって良いですよ」という許可をもらっていますが、裏を返せば「たくさんの税金をNZに落として下さいね」と言われているのと同じです。しかし、この税金も2度の出産でかなり元を取ったのではないでしょうか。実は、NZでは妊娠が判明した時点から、出産関係費用が全て無料になるのです。

その永住権の取得方法ですが、色々とあるようです。しかし、年々制度が変わっており、今では縁故関係での申請を除いて、IELTS(アイエルツ)という英語の試験を受験し、4科目(読む、書く、聞く、面接)の平均レベルが、(9点の満点中)なんと6.5点以上ないと永住権を申請する権利がないのだそうです。

ただし、この試験を受けなくても永住権申請にたどり着く方法があります。それは、勤務先で(母国語を英語としている)皆さんから、「この人(申請者)はじゅうぶんな英語力があり、仕事においても英語を駆使している」といった内容証明のレターを出してもらう方法です。

今時の申請者はほとんどこの方法を使っていると聞きます。なぜなら、IELTSの6.5点というのは、かなりの英語力を指すからです。英検の準1級程度とか紹介しているサイトがあります。かなり英語に染まっていないと難しい試験であることは明白です。ちなみに私もこの試験を受けたわけですが、当時は4科目平均が5.0であればOKでした。6.5を超えたのは4科目中「面接」「読む」の2科目だけでした。しかしこの試験の導入が発表されたばかりで、どのような試験なのかも分からずに、ましてや問題集もない時代の話ですので、少しオマケして下さい。

ここまでを読んで、NZの永住権をあきらめてしまう方も多いとは思います。しかし、その程度であきらめる方には国家としても永住権を出しません。相手に「どうしても私はNZに住みたいのです!」という意思表示をしないといけません。私の友人に、(全く点数が足りていないのに申請し)断られても粘って粘って夢を叶えた人がいます。そう、あきらめたら、おしまいなのであります。あきらめが肝心という人は、異国での生活はできないと思って下さい。

その点数制度ですが、NZ移民局が設定した内容を簡単にご紹介します。まずは技能者カテゴリーという正々堂々と真正面からの申請方法です。申請資格は55歳以下に制限。他に学歴・資格・職歴・現地での雇用保証などがポイント査定されます。合格ポイントは100点以上ですが、高ポイント取得者から合格者が決められます。

年齢ポイントは20〜29歳がもっとも高い30点で、最低が55歳の5点。NZ国内で1年以上雇用されている人は60点。3ヶ月以上は50点。職務経験が2〜4年は10点で、10年以上は30点。NZ国内での職務経験があれば最高15点のボーナスポイント。発展分野や人が足りない分野での職歴ボーナスも最高10点です。

次に資格ですが、4年制大学を卒業していると50点、大学院卒だと55点。その他NZ国内で取得した資格だと最高20点のボーナスポイントとなります。日本で取得した資格は、NZで通用するかどうかを判断する機関がありますので、そこに申請して通用するか確認できます。たとえば医師免許、弁護士免許、税理士免許など、私が持っている一般旅行業務取扱主任者、珠算とか簿記とかも申請可能だと思います(点数になるかは不明ですが…)。とにかく、合計点が100点を超えれば申請ができ、100点以下だと申請は却下されます。

次にビジネスカテゴリーでの申請もあります。起業家部門、投資家部門の2つで、IELTSは5.0点が必要です。このカテゴリーでは最低2年のNZ国内での就労経験や大金投資、企業の幹部だった経験があるなど、少し特殊ではありますが、技能者カテゴリーでは申請できないとの判断が下った方には、最後の手段として使えると思います。それにはまずNZ国内で働くことが得策だと思います。そして経験を積んで申請することです。

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最後は家族カテゴリーです。早い話、こちらの市民や永住権保持者と結婚したり、養子になったりする場合に適用されます。青い目の伴侶でも良い方にはもってこいのカテゴリーです。ちなみに私は青い目の奥様をもらえませんでしたので(笑)、自力で技能者カテゴリーから申請しました。

ただし、この文章に書いてある内容は「たった今だけ有効」であり、3ヶ月に一度は制度が変わるといわれていますので、ご注意下さい。来月には、全く違う制度が始まるかも知れません。

苦労して手に入れた永住権を駆使して、今ではたくさんの税金を支払いながらではありますが、庭先からでも満天の星を拝める生活を送っております。もっと撮影に出撃したいのではありますが、その前に赤外カット改造された一眼デジカメを手に入れたいと思います。間もなく手に入る予定なので、それ以降は毎晩出撃かな。

次回は永住権にまつわる話の続きとして、取得後の苦労話を聞いて下さい。

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