RISE月探査プロジェクト、日本測地学会賞坪井賞を受賞
【2010年6月16日 国立天文台 アストロ・トピックス(555)】
日本測地学会賞坪井賞(測地学の分野で特に顕著な業績を上げた研究者の奨励・顕彰を目的とした賞)の団体賞を、国立天文台のRISE(ライズ)月探査プロジェクトが受賞した。
アストロ・トピックスより
このたび、日本測地学会賞坪井賞(注)の団体賞を、自然科学研究機構国立天文台(台長:観山正見)のRISE(ライズ)月探査プロジェクトが受賞しました。この賞は、測地学の分野で特に顕著な業績を上げた研究者(個人・団体)を奨励・顕彰するために設けられたものです。本賞の受賞対象となった業績は、『月探査周回衛星「かぐや(SELENE)」計画における 月の測地学の推進』です。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや」は、2007年9月に打ち上げられ、2009年6月まで月全球の観測を行いました。国立天文台RISEグループは、複数衛星を使う野心的な月重力計測計画をSELENEプロジェクトの開始段階から提案し、重力計測に重要な役割を果たす2つの子衛星の開発と運用を行いました。また、地形を計測するレーザ高度計の開発と運用を行いました。
月の内部構造を制約する重要な観測量である重力は、衛星の軌道から求まります。月の裏側にいる衛星を地球からは直接追尾することができないため、以前求められていた月の裏側の重力場には大きな誤差がありました。
RISE月探査プロジェクトでは、電波を中継するリレー衛星、軌道精度を高めるためのVLBI衛星という2つの子衛星を使い、月裏側の正確な重力場を取得しました。また、極域を含む月全球の地形を世界で初めて明らかにしました。これらのデータから、月の地殻の厚さ分布図などの成果もすでに得られています。
衛星・観測機器の開発と運用には、RISEグループのほか、国立天文台水沢VLBI観測所、JAXA、国内外の大学・研究機関、メーカーなどの多くの方々の協力が、大きな役割を果たしてきました。
この授賞式と記念講演は、去る5月26日の日本地球惑星科学連合2010年大会において行われました。RISE月探査プロジェクトを代表して、開始段階から衛星運用時まで計画を主導してきた、河野宣之(かわののぶゆき)名誉教授(現中国科学院上海天文台 国家特別招聘(しょうへい)研究員)が、日本測地学会の大久保修平(おおくぼしゅうへい)会長より賞状を受け取り、記念講演を行いました。
注:日本の測地学の発展に大きな寄与をされた、故・坪井忠二(つぼいちゅうじ)氏の業績を記念して、日本測地学会が設けた賞。