原始星の周りを漂う緑色の宝石たち
【2011年6月2日 NASA】
NASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」が、生まれて間もない恒星の周りにかんらん石でできた鉱物が存在していることを発見した。このような鉱物は高温の領域でしか作られないため、原始星の周辺には物質の移動が起こっている可能性が高いことがわかった。
星が形成されている領域のガスの温度は大体マイナス170℃と非常に低い温度であり、鉱物などができるような温度ではないことが知られている。しかしNASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」は、オリオン座の星形成領域にある形成されたばかりの星の周り、しかもその外側の辺りに、かんらん石でできた鉱物が存在しているのを捉えた。この発見は星がまさに形成されている領域では初めてのことである。
見つかったのは、かんらん石の一種である苦土カンラン石(フォルステライト)だ。ハワイのグリーンビーチから彗星探査機「スターダスト」が持ち帰った塵にまで幅広く見られる、主に緑色の鉱物である。これは700℃以上にならないと形成されないことで知られているが、何故それがマイナス170℃という低温の領域に存在しているのだろう。
どうもその鍵は物質の移動にありそうだ。中心の原始星でフォルステライトが形成され、何らかのプロセスを経て外側に運ばれたものが今回スピッツァーで観測されたと考えられる。中心の星が形成される際にはジェットが出ると言われており、このジェットによって運ばれたのかもしれない。
このような星形成の外側の領域で鉱物が発見されたことで、彗星の謎も解けるかもしれない。彗星は太陽から遠く離れたところで形成されたと考えられているが、その組成は太陽系の比較的内側で形成されたと考えられる岩石とそう大きくかけ離れているわけではない。今回の発見のように、恒星系のかなり外側にまで鉱物が運ばれていたとすれば、彗星の組成と比較的内側で形成された岩石の組成の説明が付く。
今後、スピッツァーやヨーロッパ宇宙機関の赤外線宇宙望遠鏡「ハーシェル」をよる観測で、惑星のもととなる鉱物が形成されている領域の様子がわかるようになると期待されている。