銀河団中心から離れた領域で「過渡期」を送る銀河を多数発見

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【2011年8月10日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡の観測により、40億年前の宇宙にある巨大な銀河団の中心から離れた場所に、赤く輝く星形成銀河が多数発見された。大きな銀河団に吸収される以前の段階である小さな銀河群で、このような「進化の過渡期」を迎える銀河の群れがはっきり観測されたのは初めてのことだ。


発見された赤色の星形成銀河の群れ

発見された赤色の星形成銀河の群れ。クリックで広域拡大(提供:国立天文台)

40億年前の銀河団周辺での星形成銀河の分布

40億年前の銀河団周辺での星形成銀河の分布。赤色で示された星形成銀河が、明るい銀河団中心から離れた位置にあるのがわかる。クリックで拡大(提供:国立天文台)

東京大学の小山佑世さん(現:国立天文台所属)たちの研究チームが、おおぐま座の方向にある約40億年前の宇宙の巨大銀河団「CL0939+4713」周辺を米・ハワイ島にあるすばる望遠鏡で広範囲に観測したところ、新しい星がたくさん生まれている「星形成銀河」が400個以上も見つかった(画像1枚目)。これまで調査の及ばなかった領域であるが、すばる望遠鏡に搭載された広視野の主焦点カメラにより実現したものだ。

生まれたばかりの星が多い星形成銀河は通常青く光るはずだが、これらの銀河は赤く輝いていた。銀河中のダスト(塵)が青色の光を吸収している可能性もあるが、はっきりしたことは不明である。また、このような赤い星形成銀河は、銀河団のすぐそばにはほとんど存在せず、遠く離れた複数の「銀河群」領域に集中していることも明らかになった(画像2枚目)。

「本研究成果のもっとも大切なポイントは、やがて大きな銀河団に吸収される前の段階の、小さな銀河群という環境下で、銀河がすでにその性質を大きく変えようとしていたという点です」と小山さんは語る。

この領域は、以前の小山さんらの研究によって年老いた銀河が増えつつある場所であることも判明している。つまり、今回見つかった赤い星形成銀河は、星形成をさかんに行う若い段階から年老いた段階へとうつってゆく「人生の過渡期」にあると解釈することができ、そのような銀河が銀河群に多く分布していたということは、少なくとも40億年前の宇宙においては、銀河群という環境が銀河進化の鍵を握る重要な場所であったということを意味する。

今後研究チームでは、今回発見したような銀河が現れる物理的要因を解明するための新しい観測をすでに計画している。この起源解明は、銀河の進化についての理解を大きく進めるものとなるだろう。

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