エレーニン彗星が怖くない10の理由

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【2011年8月19日 NASA

「ドラえもん」や「ディープ・インパクト」など多くの映画やドラマで、彗星は地球に衝突して大打撃をもたらす恐怖の天体として描かれてきた。だが、人間のライフスパンで考えると実際に衝突が起こることは滅多になく、エレーニン彗星もまた例外ではない。


エレーニン彗星の軌道図

エレーニン彗星の軌道図。軌道が不自然に角ばった箇所があるのは表示上の問題。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

エレーニン彗星(C/2010 X1)は、2010年12月10日にロシアのLeonid Elenin氏が発見した新彗星で、現在は地球に接近しつつある。小惑星や彗星といった小天体の地球接近は、可能性が非常に低いことがわかっていても衝突を憂う話題が常につきまとう。

NASAジェット推進研究所・地球近傍天体プログラム(スペースガード計画)のDon Yeomans氏と同宇宙生物学研究所のDavid Morrison氏が、エレーニン彗星にまつわるさまざまな疑問を解消すべく回答しているので、紹介しよう。

エレーニン彗星が地球に最接近するのはいつですか

2011年10月16日に約3,500万kmの距離まで最接近すると見られています。最も明るく見えるのはその直前の時期です。

月より近くまで接近することはないのですか

地球〜月の平均距離は38万kmなのでそれより近づくことはありません。はるかに遠くを通過します。

地球のプレート活動や潮汐など、彗星接近による影響はないのでしょうか

インターネット上などで「エレーニン彗星と他の天体との直列で地球に影響が及ぶ」、あるいは「外的な力により彗星が予測よりも近くまでやってくる」といった声があるようですが、それは間違いです。「おおよそ並んだ位置にある」からといって影響は全くありませんし、軌道をずらしてしまうような天体もありません。

それに、エレーニン彗星は比較的小さい彗星です。氷がゆるく固まった密度の低い物体なのです。3,500万km先にあるそのような物体が海の干満に影響するくらいなら、私が乗っている小型バイクの方がまだ影響が大きいでしょう。

エレーニン彗星が太陽の前を通過して夜が3日間続くと聞きましたが

地球から見てエレーニン彗星が太陽面を通過することはありません。もし通過したとしても、直径が3〜5kmですから太陽を隠すには小さすぎます。

エレーニン彗星が褐色矮星という説があるそうですね。その重力で他の彗星などの軌道に影響があるでしょうか

彗星と褐色矮星はまるで違うものです。これが褐色矮星だということはありえません。どんな物体でも重力を持つとはいっても、彗星は軽すぎてそのような大きな影響力はありません。

太陽系外縁に黒色または褐色惑星があっても決して見ることはできないんですよね

そんなことはありません。赤外線で観測したり、その重力による周りの天体への影響を調べたりすることができます(参照:2011/2/21ニュース「新たな「第9惑星」発見はいつ? NASAが疑問に答える」)。太陽系の中には褐色矮星が存在しないことがわかっていますし、黒色矮星というものは実在しません。

エレーニン彗星は肉眼で見ることができますか。1997年のヘール・ボップ彗星の時は見逃してしまいました

確実なことは言えませんが、今のままで行けば、最接近時に暗い空で双眼鏡で見えるくらいで、数十年に一度という明るさを誇ったヘール・ボップ彗星の再来にはならないでしょう。

派手な天体ショーにはなりませんし、もちろん地球への影響もありえません。しかし、このような比較的若い彗星が太陽系の果てからその内側までひょっこりやってきて、その後は何千年も戻ってこない。そう考えるととても貴重です。

NASAの研究者はこの彗星を「wimpy(弱虫、軟弱)」と言っているようですが、なぜですか

微かにしか見えないと予測されているからです。ヘール・ボップ彗星は肉眼でもかなり明るく見えましたが、エレーニン彗星は全く違います。最接近の時にも、人里離れた暗い空で双眼鏡がないと見えないと予測されます。

NASAがエレーニン彗星について情報をあまり出さないのはなぜですか。大して心配しなくていいのならそのことについてもっと周知すべきだと思います

あまり明るくならないだろうと予測されているからです。1年間に数個の彗星が地球に接近していますが、その全てが大々的に話題になるわけではありません。実際には、インターネット上でさまざまな憶測が飛び交っているエレーニン彗星は本来よりもずっと注目を浴びているくらいです。もし衝突などの危険の可能性がわずかでもあれば、「Asteroid Watch」などNASAのウェブサイト上でもお知らせします。

NASAがエレーニン彗星を通常の彗星に比べて何度も観測していると聞きましたが。表向きはあまり騒がれないようにしているということですか

話題になっている天体なので世界中のアマチュア天文家による観測機会が増えていると考えられ、そこから来た噂なのかもしれません。

NASAのスペースガード計画では、地球の比較的近くを通過する彗星・小惑星の検出や追跡観測を行ってその特性や軌道を調査し、地球に危険を及ぼす恐れがないかどうかの監視を行っています。しかしそれ以上の観測をNASAが行うことはありません。

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