129.1億光年の彼方に小さくても活発に活動する銀河を発見
【2011年12月19日 すばる望遠鏡】
東京大学をはじめとする国際研究チームが129.1億光年彼方の銀河までの距離を精密に測定し、さらに星形成が非常に激しい銀河であることを突き止めた。精密に距離が求められた銀河としては、最も遠方のものとなる。
遠方にある銀河までの距離は、宇宙膨張で銀河が遠ざかっていくことにより光の波長がどれだけ伸びたか(赤方偏移したか)を計測することで求められる。その際、波長のずれを見る基準として「ライマンα輝線」(注)という光がどれだけずれたのかを求めることができると、距離が精密に求められることが知られている。
東京大学をはじめとする国際研究チームは、ハワイにある「すばる望遠鏡」の主焦点カメラを用いて「すばる・ディープ・フィールド」と「グッズ・ノース・フィールド」と呼ばれる天の領域を観測し、遠方銀河の候補を絞り込んだ。
その後、候補天体の中から11天体について、同じくハワイにあるケック望遠鏡で分光観測したところ、3つの天体でライマンα輝線を検出することができた(画像2枚目)。特にGN-108036と呼ばれる天体はハッブル宇宙望遠鏡の新しい高感度カメラで撮影されたばかりであったため、急いでこのデータの解析も行ったところ、紫外線領域で明るい、若い星がたくさんある銀河であることがわかった。またその大きさは、天の川銀河の20分の1程度と小さなものであった。
さらに赤外線天文衛星「スピッツァー」とすばる望遠鏡を用いてGN-108036を赤外線で観測したところ、星形成の活発さを求めることにも成功した。その結果、同時代の銀河と比較して、10倍以上も活発に星を形成していることがわかった。
数十億年前の銀河には、年老いたとても重い銀河があることがわかっており、GN-108036のような小さくて活発な銀河が「進化」したものと言う説もある。今回の発見は、このような銀河の「進化」の謎に迫れるのではないかと期待される。
注:「ライマンα輝線」 主に水素原子が放射する波長122nm(ナノメートル)の紫外線のこと。