太陽表面の近くで彗星が消滅する瞬間
【2012年1月24日 NASA】
太陽観測衛星「SDO」が、昨年7月に太陽に接近した彗星が消滅する現場を撮影していたことがわかった。これまでも太陽観測衛星「SOHO」が太陽に突入し消えていく彗星の姿を撮影していたが、横切っている最中にしたのがとらえられたのはこれが初めてだ。
昨年12月に太陽に接近し通過後に大彗星となったラヴジョイ彗星(C/2011 W3)は記憶に新しいが、一方で接近の際に消滅してしまった彗星も数多く存在している。そのうち、昨年7月に太陽に接近した彗星C/2011 N3が消滅する瞬間を太陽観測衛星「SDO」がとらえていたことがわかった。
大きな発見は、太陽大気に混じりあったガスの量がわかったことだ。彗星はおそらく100万t以上ものガスになって太陽大気と混じり、その一部は太陽風として再び惑星間空間に戻ってくることが予想される。そして地球では太陽風という形で、この彗星の「残骸」を手にすることができるかもしれない。太陽観測衛星「SOHO」が、毎日とは言わないまでも数日に一度は太陽に突入し消滅する彗星を観測していることから考えると、こういった彗星の残骸はかなりの量存在しているのだろう。
池に石を投げ込んだ後の波紋を見るように、これらの彗星が太陽に突入した結果、太陽がどのような応答をするのかを調べることも行われている。
実際、SDOはC/2011 N3が太陽コロナを通過しているときの様子を観測できている。冷たい彗星の核の物質が50万度以上にまで急激に加熱され、明るい太陽を背景にしているにも関わらず光っている様子がとらえられている。これらのガスはイオン化し、太陽の磁場に沿った動きを始める。このように、彗星が太陽に突入している様子を調べることで太陽の磁場の構造を調べることができる。また、彗星が消滅してからその残骸が地球に到達するまでの時間を測り、その成分を調べることができれば、非常に有益な情報になると考えられる。
「SDOができる前は、誰も太陽の大気の中で彗星が消滅する瞬間を見ることができるなんて夢見てなかった。でも今は見られると信じてるよ」と、この研究に携わったDean Pesnell氏は語っている。