探査機「ディープインパクト」がとらえたアイソン彗星
【2013年2月7日 NASA】
NASAのベテラン探査機「ディープインパクト」が、今年11月末に太陽に最接近するアイソン彗星(C/2012 S1)の姿をとらえた。太陽からまだ遠くにあるものの、すでに6万km以上の尾を伸ばしているという。
NASAの彗星探査機「ディープインパクト」が、太陽系内部に接近しつつあるアイソン彗星(C/2012 S1)の姿をとらえた。画像は1月17日〜18日にかけて撮影したもので、今年11月29日の近日点通過(太陽最接近)に向けて期待を高めてくれる。
アイソン彗星は2012年9月21日にロシアの観測チームによって発見された。NASAの地球近接天体プログラム室の分析によれば、この彗星が太陽系内部まで入りこむのは今回が初めてだ。ディープインパクトによる観測データの初期分析から、アイソン彗星はまだ太陽から7億6300万km(太陽〜地球の距離の約5倍)も離れているにも関わらず既に活発で、彗星核から6万4400km以上の尾が伸びていることが確認された。
アイソン彗星のような長周期彗星は太陽系の「オールトの雲」からやってくると考えられている。オールトの雲は太陽系を球状に取り囲むと考えられている巨大な構造で、その外縁は太陽系からもっとも近くにある恒星までの距離の3分の1に及ぶ。外部からの重力の影響で、オールトの雲にある氷や岩石、有機物が元の軌道から弾かれ、彗星となって太陽系の中心を目指す旅をスタートさせる。
アイソン彗星が地球にもっとも近づくのは2013年12月26日、地球からは6400万km以上離れており、危険が及ぶ心配はない。天文マニアにとっては、太陽に近づいていくにつれて彗星のコマ(頭のボンヤリした部分)と尾が発達していく姿を観察する絶好の機会だ。その前に消失したり分裂したりしないことを祈りながら、心待ちにしたい。
2005年1月に打ち上げられたディープインパクトは、同年7月4日にテンペル彗星(9P/Tempel)に子機を衝突させて飛び散る物質やその痕を観測した。2010年11月にハートレー彗星(103P)の接近観測、2012年1月にはギャラッド彗星(C/2009 P1)の撮像を行い、今回のアイソン彗星が4つめのターゲットとなる。