エウロパ表面の筋模様は海塩かもしれない
【2015年5月19日 NASA JPL】
木星のガリレオ衛星のひとつエウロパの表面には、無数の茶色の筋模様が見られる。1994年から2003年まで木星を観測したNASAの探査機「ガリレオ」のデータなど長年の研究から、地下にあると考えられている海から噴出した物質、おそらく硫黄とマグネシウムを含む化合物によるものと考えられるが、その正体についてははっきりしていない。
NASAジェット推進研究所のKevin Handさんらは、温度や圧力、放射線量がエウロパの表面に似た環境を再現し、候補となる物質のスペクトルを実際の観測データと比較するという研究を行った。摂氏マイナス173度に設定された真空中に塩のサンプルをさらしたところ、ガリレオミッションの撮影画像にみられるような筋模様そっくりの茶色に変色した。さらに、スペクトルも似たものとなった。
実験では、塩が放射にさらされるほどより濃い色になっていった。この色のバリエーションを使えば、エウロパ表面に見られる模様や、地下から噴き出した物質がどれだけ古いかを知るのに役立つとみられている。ガリレオ以降エウロパの詳細な探査は行われていないため、将来の探査機による直接探査も待たれるところだ。
〈参照〉
- NASA JPL: NASA Research Reveals Europa's Mystery Dark Material Could Be Sea Salt
- Geophysical Research Letters: Europa's surface color suggests an ocean rich with sodium chloride - Hand - 2015 - Geophysical Research Letters - Wiley Online Library 論文
〈関連リンク〉
- NASA Solar System Exploration: http://solarsystem.nasa.gov/
- アストロアーツ:
- 特集 木星とガリレオ衛星
- 星ナビ.com 金井三男のこだわり天文書評:
- 「太陽系はここまでわかった」
- 「新しい太陽系」
〈関連ニュース〉
- エウロパ:
- 2014/09/12 - 木星の衛星エウロパでプレートの沈み込みの証拠
- 2013/12/13 - エウロパ表面に見つかった水蒸気と粘土鉱物
- 2013/03/08 - 地表から探るエウロパの海
- 2011/11/18 - エウロパの海は生命に適している? 地球の氷河をモデルに新たな成果
関連記事
- 2024/10/25 10cmの望遠鏡でイオの火山活動の変化を観測
- 2024/10/15 木星の衛星を探査、「エウロパ・クリッパー」打ち上げ成功
- 2024/09/10 【特集】木星(2024~2025年)
- 2024/08/27 探査機「ジュース」、世界初の月・地球ダブルスイングバイを実施
- 2024/08/07 2024年8月中旬 火星と木星が大接近
- 2024/07/03 2024年7月上旬 木星とアルデバランが接近
- 2024/04/12 2024年4月下旬 木星と天王星が大接近
- 2024/03/29 衝突シミュレーションで探る氷衛星エウロパの構造
- 2024/02/07 2024年2月15日 月と木星が接近
- 2024/01/11 2024年1月18日 月と木星が接近
- 2023/11/21 2023年12月22日 月と木星が接近
- 2023/11/16 2023年11月25日 月と木星が大接近
- 2023/10/26 2023年11月3日 木星がおひつじ座で衝
- 2023/10/20 2023年10月29日 月と木星が接近
- 2023/09/21 リュウグウ試料から始原的な塩と有機硫黄分子群を発見
- 2023/09/14 10例目、木星表面の閃光現象がとらえられる
- 2023/08/29 2023年9月4日 月と木星が接近
- 2023/08/02 【特集】木星(2023~2024年)
- 2023/07/05 2023年7月12日 月と木星が大接近
- 2023/05/26 木星大気の長期変動は「ねじれ振動」に起因する可能性