ガンマ線で輝く最遠方の超大質量ブラックホール

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75億光年彼方の活動銀河核からの高エネルギーガンマ線放射がとらえられた。これまでに観測された高エネルギーガンマ線天体としては最も遠いもので、宇宙初期から現在までの宇宙進化の情報を導くための「灯台」となることが期待される。

【2015年12月21日 東京大学宇宙線研究所

銀河のなかには、その中心にある太陽の100万倍から数十億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールをエネルギー源として、電波から高エネルギーガンマ線に至る幅広い波長で輝いて見える激しい活動性を示すものがある。

とくにこうした活動銀河核からの高エネルギーガンマ線は、天体から地球に届くまでの間に宇宙空間で吸収されてしまうため、観測が難しい。はるばる地球までやってきたガンマ線は地球の大気にブロックされてしまうことや、天体の活動が激変するために強度が強くなったアウトバーストの瞬間をとらえる必要があることも、高エネルギーガンマ線の観測にとっての障壁である。

活動銀河核の想像図
活動銀河核の想像図(提供:NASA)

大気によるブロックについては、高エネルギーガンマ線が地球の大気の原子核と衝突して生成される荷電粒子が発する「チェレンコフ光」を検出してガンマ線の大気突入を同定し、間接的に高エネルギーガンマ線を観測するという仕組みがある。この方法を用いてカナリア諸島ラパルマ島の「MAGIC望遠鏡」で、ガンマ線の高感度観測が行われている。

また、検出にあたっては、全天を監視しているガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」がガンマ線アウトバーストの兆候をとらえて世界中に情報を伝えるという体制がとられており、地上と宇宙の連携によって迅速なフォローができるようになっている。

東京大学宇宙線研究所の手嶋政廣さん、京都大学の窪秀利さん、東海大学西嶋恭司さんたちが研究を進めるMAGIC国際共同研究チームは、フェルミからの情報を元にMAGIC望遠鏡を向け、うしかい座の方向75億光年彼方の活動銀河「PKS1441+25」から放出される高エネルギーガンマ線を発見した。75億光年という距離は、これまでに観測された高エネルギーガンマ線天体として最も遠いものだ。

ガンマ線が地球に到来するまでに吸収される量を高精度に測定することで、宇宙を満たす可視赤外背景放射のエネルギー密度が求められ、従来の研究と整合性があることが確かめられた。可視赤外背景放射は星や銀河形成の歴史の産物であり、その量や分布は宇宙の進化の過程を理解するための重要な手がかりとなる。最遠方天体からの高エネルギーガンマ線放射が見えたという今回の発見は、この天体が宇宙初期から現在までの宇宙の進化の情報を導くための「灯台」となりえることを意味している。

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