「限界を超えたIa型超新星」の起源を解明、降着説を支持

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Ia型超新星のなかには、通常考えられているメカニズムでは説明が難しい「限界を超えた超新星」が数例発見されている。詳しい観測によりこうした超新星の近くからの強い赤外線放射がとらえられ、超新星爆発の起源が降着説と呼ばれる現象であることを強く支持する結果が得られた。

【2016年6月10日 甲南大学

星の大爆発現象である超新星爆発にはいくつかのタイプがある。そのうちIa型超新星は、超新星が出現した銀河に匹敵するほど明るく輝き、本来の明るさがほぼ同じと考えられていることから、銀河までの距離を正確に測定する際の重要な指標となる(見かけの明るさと比較することで距離が推定できる)。

しかし、その重要性にも関わらず、Ia型超新星の起源については「2つの星が回り合う連星系である」こと以外は明らかになっていない。「降着説」と「合体説」という2つの起源が考えられているものの、30年以上にわたり論争が続いている。

2つのうち有力視されているのは、白色矮星と通常の恒星の連星系が起源であるという「降着説」だ。通常の恒星から白色矮星へ物質が降り積もっていき、質量が限界に達すると爆発に至るというメカニズムだが、限界質量を超えた白色矮星の爆発でなければ説明が困難な特異なIa型超新星が数例発見され、研究者を悩ませてきた。

2012年7月、いて座の方向1億3000万光年彼方の銀河ESO 462-016に、この「限界を超えた超新星」候補の「SN 2012dn」が発見された。同種の超新星のうちで最も近く詳細な観測が可能であると期待されたことから、甲南大学の山中雅之さんたちの研究グループは光・赤外線天文学大学間連携を通して11台の天体望遠鏡を使い、150日間にわたって爆発初期からの観測を行った。

SN 2012dn
広島大学東広島天文台の口径1.5mかなた望遠鏡でとらえられた銀河ESO 462-0016とSN 2012dn(提供:広島大学東広島天文台)

観測の結果、通常では見られない強い赤外線放射がとらえられた。さらに詳細な解析から、超新星として爆発する前に起源天体から放出された物質が超新星からの放射によって温められ、その放出物が赤外線を放射していることが明らかにされた。超新星から放出物までの距離は0.2光年程度であるということもわかった。

「限界を超えた超新星」において爆発前の天体由来の放射が観測されたのは初めてのことだ。その放出率の見積もりから、この爆発は「降着説」起源であることが強く支持されている。降着説では2つの星の周囲に密度の濃い物質が存在しているが、合体説では天体の周囲に放出されたガスはほとんどなくなると考えられているためだ。

「限界を超えた超新星」とそうではない典型的な超新星の起源は同一なのか異なるのか、なぜ白色矮星が限界質量を超えるのかといった点についてはわかっておらず、今後同種の現象の観測や研究による解明が期待される。

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