風変わりな太陽系外縁天体の軌道を第9惑星なしで説明

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一部の太陽系外縁天体に見られる変わった軌道を説明するのに、第9惑星の存在を仮定する必要はないのかもしれない。ポイントは、カイパーベルトの質量が従来の想定よりもずっと大きいと考えることだという。

【2019年1月28日 ケンブリッジ大学

海王星の外側には太陽系形成の残骸である、主に氷でできた天体が多数存在する「エッジワース・カイパーベルト」(以下、カイパーベルト)と呼ばれる円盤状の領域が広がっている。カイパーベルトやさらに外側に存在する太陽系外縁天体(Trans-Neptunian Object; TNO)の多くは、ほぼ円形の軌道を公転しているが、2003年以降に長楕円の軌道を持つTNOも見つかるようになってきた。現在そのようなTNOは約30個発見されている。

カイパーベルト
氷天体が存在するカイパーベルトの想像図(提供:ESO/M. Kornmesser)

これら一風変わったTNOの軌道は、向きや傾き方がだいたい同じような形をしているが、その様子は太陽系の既知の惑星からの重力だけでは説明がつかない。そのため研究者たちは、まだ見つかっていない「第9惑星」が存在するという仮説を立て、それによって一群のTNOの変わった軌道を説明しようとしてきた。この仮説では、地球の10倍以上の質量を持つ第9惑星がはるか遠くに存在しているとされている。

「第9惑星説は魅力的ではありますが、存在するとしてもまだ検出されていません。私たちは、ドラマ性には欠けても、もっと自然な別の可能性があるかどうかを知りたいと思いました。シンプルに、カイパーベルトの重力の影響を考えてみてはどうかと思ったのです」(英・ケンブリッジ大学 Antranik Sefilianさん)。

Sefilianさんは、レバノン・ベイルート・アメリカン大学のJihad Toumaさんと共に新しいモデルを構築し、変わったTNO群の軌道が説明できることを示した。これまでにも第9惑星を必要とせずカイパーベルトの重力でTNO群の軌道を再現するという研究はあったが、今回の研究では8惑星の質量と重力も考慮されている。

第9惑星なしでTNOの軌道を再現するにあたって、今回のモデルでは、カイパーベルトの総質量は地球質量の数倍から10倍の間であると考えられている。従来カイパーベルトの総質量は地球の10分の1程度とみられていたので、それよりもかなり大きい。「太陽系の内側から外縁部の円盤全体を一度に観測するのは、ほとんど不可能です。円盤の直接的な観測の証拠はありませんが、第9惑星の証拠もありません。だからこそ、様々な可能性を検討するのです。その過程で、他の恒星の周りにあるカイパーベルトに似た構造を観測したり、惑星形成のモデルに注目したりすることは、とても興味深いものです」(Sefilianさん)。

「もしかしたら、質量の大きな円盤と第9惑星の両方が存在する可能性もあります。新しいTNOが発見されるたび、その振る舞いを説明する情報が増えていくでしょう」(Sefilianさん)。

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