太陽系外縁天体の特性、未知の惑星で説明
【2023年8月31日 近畿大学】
現在、太陽系で見つかっている惑星は8個だが、この数が約45億年前の太陽系形成時から同じだったかは定かではない。現在最遠の惑星とされる海王星の外側には、多数の小天体が集まったエッジワース・カイパーベルト(または単にカイパーベルト)と呼ばれる領域があるが、その形成過程に未知の惑星が関わった可能性がある。そして、その惑星は現在もカイパーベルトの彼方に潜んでいるかもしれない。
近畿大学のPatryk Sofia Lykawkaさんたちの研究チームは、太陽系の形成直後から未知の惑星が存在すると仮定したシミュレーションにより、太陽系外縁天体の特性を説明しようと試みた。
海王星より遠方にある天体(TNO;Trans-Neptunian Objects)は、以下の4つの集団に分けることができる。
- その天体と海王星の公転周期が1:2や2:3などの簡単な整数比になる「平均運動共鳴」の位置に捕獲された、始原的であり安定した「共鳴TNO」
- 海王星の重力の影響が及ばない位置に軌道を持ち、近日点距離(太陽に最も近づいた時の距離)が60億km(40天文単位)を超える「離脱TNO」
- 45度以上の高い軌道傾斜角を持つTNOの集団
- 太陽系外縁天体の一つである「セドナ」のように、説明の難しい特異な軌道を持つ極端なTNOの集団
シミュレーションの結果、質量が地球の1.5~3倍、太陽からの距離が約300~750億km(または約300~1200億km)で、軌道が30度傾いた惑星があれば、こうした特性が説明できることが示された。
今回の研究からは、未知の惑星に加え、太陽から150億km以上離れた位置に近日点距離が大きい、もしくは大きな軌道傾斜角を持つ未知のTNOが存在し得ることも示唆される。そのようなTNOの集団は、カイパーベルト惑星の存在を観測的に検証する際の指標となりそうだ。
「太陽系の惑星数、惑星の定義、太陽系史における地球の位置づけ、そして太陽系内の仮説上新惑星の存在は、常に人類を魅了してきました。今回の研究から、太陽系に未発見の惑星および未知のカイパーベルト天体の存在が予想されたことで、望遠鏡を用いた国内外の観測調査が促進されると期待できます」(Lykawkaさん)。
〈参照〉
- 近畿大学:シミュレーションで太陽系外縁部に未発見の惑星がある可能性を示唆 世界初、海王星以遠の天体の特性を再現することに成功
- The Astronomical Journal:Is There an Earth-like Planet in the Distant Kuiper Belt? 論文
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