アルマがとらえた太陽系外縁天体2014 UZ224
【2017年4月20日 アルマ望遠鏡】
米・ミシガン大学のDavid Gerdesさんたちの研究チームは、チリのセロ・トロロ汎米天文台の口径4mブランコ望遠鏡による観測から小天体2014 UZ224を発見し、2016年に発表した。この発見はダークエネルギーの性質を明らかにしようとする「ダークエネルギー・サーベイ」の副産物で、初期調査で撮影された約1万5000枚の画像中にとらえられた11億個の天体のなかに2014 UZ224が写っていた。
ブランコ望遠鏡で撮影された可視光線画像から、2014 UZ224の距離と軌道の情報が得られる。2014 UZ224は現在太陽から約92天文単位(138億km)離れており、軌道が明らかになっているものとしては準惑星エリス(約97天文単位)に次いで2番目に遠い太陽系外縁天体だ。公転軌道を一周するのには1140年かかる。
しかしこの観測だけでは、2014 UZ224のサイズやその他の性質を明らかにすることはできなかった。点像にしか見えない可視光線観測では、表面の反射率の高い小さな天体と、反射率の低い大きな天体との区別がつかないからだ。
そこでGerdesさんたちはこの天体を、アルマ望遠鏡で追加観測した。太陽系外縁天体から放たれる電波(ミリ波・サブミリ波)の強さと、太陽から天体までの距離をもとに推測される温度の情報から、天体の大きさを測定することができる。
観測の結果、2014 UZ224の大きさは約635kmと見積もられた。これは準惑星ケレスの3分の2ほどに相当する大きさだ。これくらいの大きさがあれば、2014 UZ224は球形をしている可能性が高いと考えられることから、2014 UZ224は将来準惑星に分類されるかもしれない。
大きさの推定から、可視光線の強さをもとに2014 UZ224の表面の反射率が13%ほど(野球場の土と同じくらい)であることもわかった。2014 UZ224のような小天体は太陽系ができたときの名残と考えられており、天体の軌道や天体自体の性質は、太陽系の誕生の様子を探る手がかりになる。未知の「第9惑星」の発見も、今回と同様の方法で可能かもしれない。
「太陽系の外縁部には、まだまだ未知の世界が広がっています。太陽系というのは、豊かで複雑な場所なのです」(Gerdesさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡: 太陽系外縁部に潜む小天体をアルマ望遠鏡が捉えた
- The Astrophysical Journal Letters: Discovery and Physical Characterization of a Large Scattered Disk Object at 92 au 論文
〈関連リンク〉
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