特異な爆発を示した古典新星

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2017年6月に爆発を起こした新星「ASASSN-17hx」のタイプが、観測時期に応じて変化するという非常に珍しい特徴を持つことが、インドネシア・ボッシャ天文台の観測で明らかになった。

【2019年7月4日 京都産業大学

新星は、白色矮星と呼ばれる地球サイズの高密度天体の表面に伴星からガスが降り積もり、質量や温度が限界に達すると白色矮星の表面が吹き飛ばされる爆発現象だ。爆発によって明るくなり、天の川銀河の中でも年間に10個ほど発見される。

新星爆発の想像図
新星爆発の想像図(提供:京都産業大学)

新星は恒星が密集した天の川銀河の中心部に近い方向に出現する確率が高いため、銀河の中心方向が見やすい場所から観測を行うことが新星の発見や研究の上で適している。この点で、日本国内よりも赤道付近や南半球のほうが有利だ。

京都産業大学の神山天文台では、2014年にインドネシア・バンドン工科大学の学生を招いた新星に関する研究・観測実習を実施し、その翌年に両大学間で研究協定を締結した。その後2016年には神山天文台から低分散分光器をバンドン工科大学ボッシャ天文台へ移設し、日本では観測できない新星の観測研究を開始している。

今回、ボッシャ天文台で実施した観測から、2017年6月23日ごろにたて座の方向で爆発を起こした新星「ASASSN-17hx(たて座V612)」のタイプが、観測時期に応じて変化するという非常に珍しい特徴を持つことが判明した。

「ASASSN-17hx」の光度曲線
「ASASSN-17hx」の光度曲線。縦軸が等級、横軸は日付。色の違いは観測波長の帯域の違いに対応している(提供:American Association of Variable Star Observers (AAVSO) database)

これまで新星のタイプは、爆発放出物の成分の特徴から、鉄イオンの輝線が顕著な「Fe II型」と、鉄イオンの輝線が目立たずヘリウムや窒素の輝線が顕著な「He/N型」という2つに分類されてきた。しかし、なぜそのようなタイプに分かれるのか、分類の物理的意味は十分に理解されていなかった。

観測時期に応じてタイプが変化するという今回の結果は、これまで行われてきた新星の分類が、新星爆発による放出物の成分量を直接反映しているということではなく、放出メカニズムに起因した物理状態の違いを反映している可能性が高いことを示唆するものであり、新星爆発のメカニズムの解明にむけた重要なヒントになると考えられている。

「今後は神山天文台とボッシャ天文台との研究協力をさらに強固にし、引き続き新星の観測的研究を続けていく予定です」(神山天文台 河北秀世さん)。