冥王星の14の地名を新たに承認、ローウェル領域、ライト山など
【2019年8月15日 国際天文学連合】
NASAの探査機「ニューホライズンズ」は2015年7月に、史上初めて冥王星とその衛星「カロン」をフライバイ(接近通過)して観測を行った。
その観測から明らかになった様々な地形のうち、これまで2017年に冥王星の14の地形の名称が、2018年にカロンの11の地形の名称が、それぞれ国際天文学連合(IAU)の惑星系命名ワーキンググループによって公式に承認されていた。
今回、同ワーキンググループによって新たに、冥王星の14か所の地形の公式名称が承認された。冥王星の地名は神話の冥界に関するもの、冥王星やカイパーベルトに関係する科学者、先駆的な宇宙ミッションや探査機などから選ばれることになっている。
IAUによって今回新たに承認された冥王星上の14の地形の名称とその由来
※読み方や地形の訳語はアストロアーツによる。
- アルキオニア湖(Alcyonia Lacus):
ギリシャ神話における、冥界への入り口の一つ。ヘルクレスとヒドラのストーリーで知られるレルネーの沼地の近くに位置する - エルカーノ山脈(Elcano Montes):
スペインの探検家フアン・セバスティアン・エルカーノ(1476-1526)。大航海時代にポルトガルの航海者フェルディナンド・マゼランの船団を引き継ぎ、史上初の世界周航を果たした - フンアフプー峡谷(Hunahpu Valles):
マヤ神話に登場する双子の神のうちの一人フン・フンアフプー。球技で冥界の主たちを破った - キラッゼ・クレーター(Kiladze crater):
ジョージアの天文学者ロラン・キラッゼ(1931-2010)。冥王星のダイナミクスや位置測定、測光における初期研究の先駆者 - カレー・クレーター(Khare crater):
インドの惑星科学者ビシュン・カレー(1933-2013)。惑星大気化学の専門家で、冥王星で最も暗く赤い領域の原因とみられる有機分子ソリンに関する研究を行った - ローウェル領域(Lowell Regio):
アメリカの天文学者パーシヴァル・ローウェル(1855-1916)。ローウェル天文台を創設し、組織的な海王星以遠の惑星探しを計画した - ムウィンド地溝帯(Mwindo Fossae):
アフリカ・コンゴ民主共和国の山岳地帯に住むニャンガ族に伝わる叙事詩の英雄ムウィンド。冥界を旅し、賢明さと力を備えた王となった - ピカール山(Piccard Mons):
スイスの発明家・物理学者オーギュスト・ピカール(1884-1962)。1961年に世界で初めて気球で成層圏に到達した - ピガフェッタ山脈(Pigafetta Montes):
イタリアの学者・探検家アントニオ・ピガフェッタ(1491ごろ-1531ごろ)。マゼランの船に乗って世界を一周し、航海で発見したことを記録した - ピリ断崖(Piri Rupes):
オスマン帝国の航海士・地図製作者アフメット・ムヒッディン・ピリ(1470ごろ-1553)。現存する最古のものの一つとなる、北中米の地図を作製した - シモネッリ・クレーター(Simonelli crater):
アメリカの惑星天文学者デイモン・シモネッリ(1959-2004)。小さな衛星の形や冥王星の形成など、幅広い分野の研究を行った - ベガ(ヴェガ)大陸(Vega Terra):
旧ソ連の探査機「ベガ1号」と「ベガ2号」。1985年に金星を探査し、地球以外の天体に初めて気球を降ろした。また1986年にはハレー彗星に接近して核を撮像した - ベネラ(ヴェネラ)大陸(Venera Terra):
旧ソ連が1961年から1984年まで実施した金星探査ミッション「ベネラ計画」。地球以外の天体の大気に初めて人工物を突入させ、金星表面への軟着陸を果たし、画像の撮影やデータの送信にも成功した - ライト山(Wright Mons):
アメリカの技術者ウィルバー・ライト(1867-1912)とオーヴィル・ライト(1871-1948)。「ライト兄弟」として知られ、世界初の動力飛行機の製造および飛行成功を達成した
〈参照〉
〈関連リンク〉
- IAU
- Gazetteer of Planetary Nomenclature
- 冥王星の地名一覧 今回のリリースは今年5月30日に承認された14個について解説されており、2018年に承認の2個と今年8月に承認の1個は含まれていない
- Our Pluto
- New Horizons
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