地球とニューホライズンズから星の視差測定に成功
【2020年6月17日 NASA】
2006年に打ち上げられたNASAの探査機「ニューホライズンズ」は、2015年7月に冥王星、2019年1月に太陽系外縁天体アロコスへと接近した後も飛行を続けており、現在は地球から約70億km離れたところに位置している。
今年4月22日から23日にかけ、ニューホライズンズは長距離望遠鏡カメラを使って、太陽系の近傍に位置する恒星「プロキシマケンタウリ(ケンタウルス座の方向、太陽系から最も近い恒星、距離約4.2光年)」と「ウォルフ359(しし座の方向、太陽系から3番目に近い恒星系、約7.9光年)」を撮影した。これらの撮影画像と、地球上の望遠鏡が同じ恒星をとらえた画像とを比較したところ、恒星の位置が変化しており、目に見える形で視差が示された。
「視差」とは、異なる2つの場所から見た同じ恒星の見かけの位置が、背景に対してずれる現象のことだ。視差の大きさを測定すれば、三角測量の原理によって恒星までの距離を直接的に求めることができる。恒星が近いほど、また観測する2点間の距離が大きくなるほど、視差は大きくなるが、太陽系に最も近い恒星であるプロキシマケンタウリの年周視差(太陽から地球までの距離である約1.5億km離れた2点からの視差)でさえ、1秒角(1度の3600分の1)にも満たない。
一方、70億kmの距離を隔てたニューホライズンズと地球とで観測すれば、距離が遠ざかった分だけ視差も大きくなるので、視差が明確に認識できる。「ニューホライズンズは『史上初』だらけのミッションです。今回のような形で恒星の視差を示したことも、史上初のものの一つと言えます」(ニューホライズンズ・プログラム・サイエンティスト Kenneth Hansenさん)。
また、天文学者で英国のロックバンド「クイーン」のギタリストでもあるBrian Mayさんたちは今回の観測画像を用いて、プロキシマケンタウリやウォルフ359が浮き上がって見えるような立体視用の画像を作成した。「ニューホライズンズは、180年にわたる立体視画像の歴史において最大の視点間距離を達成しました」(Mayさん)。
歴史を通じて冒険家や航海士たちが、自分たちの現在地を知るために星を頼りにしたのと同じように、人類が将来天の川銀河を探査する際にも恒星の位置をナビゲーションに使用できる。今回、ニューホライズンズが初めてそれを実証したのである。
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