ハッブルの10倍暗い宇宙を見たニューホライズンズ

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探査機「ニューホライズンズ」が、黄道光に邪魔されることなく宇宙の暗闇を観測した結果が報告された。宇宙に存在する銀河の総数は数千億個程度で従来の想定より少ないという。

【2021年1月15日 NOIRLabHubbleSite

宇宙の全体像を把握するには、不必要な光に邪魔されることなく深宇宙の暗闇を覗き込むことができる環境が必要だ。大気圏の外に飛び出したハッブル宇宙望遠鏡(HST)はまさしくその任務に挑戦するのにふさわしく、観測できる範囲の宇宙に銀河がいくつあるかという疑問に答えようとしてきたのもHSTである。

大気圏の外にあるHSTの観測を邪魔する大きな要因が、太陽系内部を満たす黄道光の影響だ。黄道光とは、崩壊した小惑星や彗星が放出した塵が太陽光を反射することで生じる光である。

黄道光
左下から右上に伸びているのが黄道光。左上から右下へ流れているのは天の川(提供:Z. Levay)

米国立光赤外線天文学研究所(NOIRLab)のTod Lauerさんたちの研究チームは、NASAの探査機「ニューホライズンズ」が観測した宇宙の暗さを分析することで、宇宙の銀河の数を見積もろうとしている。冥王星などの探査のために太陽系外縁部へ到達したニューホライズンズでは黄道光がないおかげで、観測できる宇宙の暗さがHSTの10倍にもなる。

真っ暗に見える宇宙にも、かすかな「宇宙可視光背景放射」が存在している。その一部は、個々の姿をとらえることができないほど微弱な銀河からの光が集まったものだと考えられるので、宇宙可視光背景放射の観測によって銀河の数を推定できる。ただし、太陽系の中にいる限り黄道光に邪魔されてしまうのと同じように、ニューホライズンズも天の川銀河の中にいる限りは、星間塵が反射する光などの影響を免れ得ない。そうした天の川銀河内部の光と宇宙可視光背景放射を区別するのが特に難しい作業だったという。

「この種の観測は極めて困難です。長きにわたり多くの人が挑戦してきました。ニューホライズンズは、前人未踏の精度で宇宙可視光背景放射を測定できる見晴らしのいい場所を提供してくれたのです」(Lauerさん)。

Lauerさんたちは、宇宙可視光背景放射から推測される銀河の総数は、HSTの観測限界(1000億~2000億個)のせいぜい2倍程度であると結論づけた。以前の研究では、宇宙の銀河の総数は約2兆個にも上るという成果が発表されていたが(参照:「宇宙に存在する銀河は2兆個、従来の見積もりの10倍」)、Lauerさんたちによれば数千億個程度ということになる。

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