ISS「きぼう」での微小重力実験で、高比重粒子の会合体の生成に成功
【2021年10月18日 名古屋市立大学】
数個から10数個の原子・分子が集まった会合体(クラスター)は、結晶成長の初期過程や、細胞内でのタンパク質複合体の形成など、自然界で広く観察される。そのうち、コロイド(1~0.001μm程度の粒子などが気体や液体中に分散している状態)会合体は、光学分野の材料として期待されている。
光学応用には高屈折率の材料が必要で、高屈折率材料は通常高比重であるため、コロイド会合体の実験を重力の影響が大きい地上で行うことは難しい。一方、国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境は実験に適している。
名古屋市立大学の山中淳平さんたちの研究チームは、大きさが約1μmのコロイド粒子が水中で自発的に集合して形成される会合体について、ISSの「きぼう」日本実験棟を利用した。
実験では、正と負に帯電させたコロイド粒子が各々分散した2液が「きぼう」へと運ばれ、宇宙飛行士が2液を混合した。こうして作られた正負粒子の会合体を地上へ持ち帰り分析したところ、地上では生成し難い、高比重粒子(チタニア粒子)の会合体の生成が確認された。
今回の実験成果は、フォトニック結晶(屈折率が光の波長のオーダーで周期的に変化する構造体)やコロイド粒子を利用したセンサー作製のための基礎データとして活用が期待される。また、四面体型のコロイド会合体がさらに集合して生成する「ダイヤモンド格子」構造は、光を閉じ込める材料として期待される。医療分野でも活用される可能性がある。
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