小惑星表面の粒子は予想外にくっつきにくい
【2023年3月29日 神戸大学】
小惑星表面のような重力の小さい環境では、砂などの微粒子に働く力として粒子同士の付着力が重要だ。たとえば小惑星に隕石が衝突して地震が発生したときなどに、表面の粒子がどのくらい動くのかに、この付着力の大きさが影響する。
これまで、小惑星表面の微粒子の付着力は、球形の粒子同士に働く分子間力(ファンデルワールス力)の理論を元にして、サイズが大きな粒子ほど大きいと考えられてきた。また、具体的な力の大きさは月面の細かい砂(レゴリス)とほぼ同じと仮定されていた。しかし、実際の小惑星粒子は隕石衝突などでできたもので、表面に凹凸を持つ。そのような不規則な形をした小惑星粒子の付着力についてはよくわかっていなかった。
神戸大学の長足友哉さん(現・東北大学)と中村昭子さんの研究チームは、小惑星粒子の大きさやでき方が付着力にどう影響するかを調べるため、炭素質隕石であるアエンデ隕石とタギッシュレイク隕石の試料を乳棒でつぶしたり弾丸で破壊したりして2種類のサイズ(数μmと数十μm)の破片を作り、付着力を測定した。
測定の結果、隕石破片の生成方法は付着力に影響しないことや、より細かい凹凸を持つタギッシュレイク隕石の破片はアエンデ隕石の破片に比べて付着力が数分の1しかないことがわかった。
また、数μmの破片は数十μmの破片に比べて付着力が数分の1だが、破片を板に押し付けてから測定すると、破片のサイズと付着力の関係に違いは見られなくなった。破片を板に押し付けることで、粒子と平板との接触点の数が変わることが理由と考えられる。これらの結果から、研究チームでは、接触点1個当たりの付着力は隕石特有の凹凸の程度で決まっていて、破片のサイズや生成方法にはよらないと考えている。
今回の測定から推定される小惑星粒子の付着力は球状の粒子よりも桁違いに弱く、地震動などで力を受けた場合には、天体表面の粒子はこれまでの推定よりもはるかに動きやすいと考えられる。実際、「はやぶさ」や「はやぶさ2」などの探査によって、小惑星表面の粒子は活発に移動していることがわかっており、今回の成果はそれを裏付けるものだ。
隕石破片の付着力は、小惑星表面の進化だけでなく、固体微粒子が微惑星や惑星へと成長する惑星形成の初めの段階や、大気を持つ天体で表面粒子が風で移動する過程を理解する上でも重要だ。「はやぶさ2」のような将来のサンプルリターン探査においても、試料採取のしやすさなどを評価する上で重要な情報となる。
〈参照〉
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