超小型探査機「プロキオン」、彗星の水の謎を解明

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2014年に探査機「はやぶさ2」と一緒に打ち上げられた、世界最小クラスの超小型深宇宙探査機「プロキオン」がチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の水素ガスを観測し、彗星核からの水分子放出率の絶対量を明らかにした。超小型深宇宙探査機による世界初の理学成果だ。

【2017年1月24日 国立天文台京都産業大学立教大学

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)は、ヨーロッパ宇宙機関の探査機「ロゼッタ」が2年以上にわたって観測を行った天体だ。ロゼッタは彗星を周回しながら彗星核の近傍から精密な観測を行い、彗星が太陽に近づき遠ざかるにつれて活動が変化する様子や、表面の地形などを調べた。

ロゼッタは、彗星氷として最も豊富に含まれる分子である水分子の観測も行った。水分子は彗星の活動度だけでなく、太陽系初期に形成され彗星に取り込まれた分子の形成過程に関する理解においても重要なものだ。しかし、彗星コマ(彗星核の周囲のボンヤリした部分)中に位置したロゼッタからは、コマの特定の領域しか観測できていない。

この観測結果からコマ全体の構造や彗星核の別の場所から放出される水分子の量を推定するためには、彗星コマ・彗星核モデルが必要となるが、水分子生成率の推定値はモデルによって10倍程度も異なる。モデルの妥当性を検証するためには、コマ全体の観測から求めた水分子生成率の絶対値と比較する必要がある。

そこで、探査機「プロキオン」による彗星観測が行われた。「プロキオン」は2014年12月に探査機「はやぶさ2」の相乗り衛星として打ち上げられた探査機だ。質量約65kg、一辺約60cmと、深宇宙探査機としては世界最小サイズである。当初は「プロキオン」による彗星観測は計画されていなかったものの、立教大学を中心に開発された水素ガスを観測できる望遠鏡「ライカ」を用いて、2015年9月に観測が実施された。

「プロキオン」とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
「プロキオン」とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のコンセプト画像(提供:NAOJ/ESA/Go Miyazaki)

彗星コマ中の水素ガスの大部分は、彗星核から放出した水分子が太陽紫外線で壊されること(光解離)で生成される。そのため、水素ガスの観測により、核からの水分子放出量が推定可能となる。「プロキオン」による水素ガスの観測から、彗星活動が最も激しい近日点(太陽最接近)付近での水分子生成率の絶対量が決定され、彗星のコマ・核モデルが検証された。この結果とロゼッタによって決定された成分比などを元に、近日点前後を含む期間の彗星の活動度が非常に正確に推定できた。

水素原子の生成過程
水素原子の生成過程の模式図(提供:国立天文台)

今回の成果は、超小型深宇宙探査機による探査としては世界初の理学的な成果だ。さらに、ロゼッタのような大型の探査計画でも実施できない重要な部分を、低コストかつ短期間で開発された「プロキオン」がサポートしたという点でも重要な意義があり、今後の大型計画における小型探査機のモデルケースとなると期待される。

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