日本の宇宙望遠鏡「LAICA」、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の撮影に成功

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立教大学などが開発した宇宙望遠鏡「LAICA」が9月13日に、地球から3500万km離れたところからチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を撮影し、彗星周辺に存在する水素ガスの新たな全体像をとらえることに成功した。

【2015年10月16日 立教大学京都産業大学

「LAICA(Lyman Alpha Imaging Camera)」は立教大学理学部の亀田真吾さんの研究室を中心に東京大学、JAXAと共同で開発された、主鏡口径75mmの手のひらサイズ宇宙望遠鏡だ。研究室の学生が中心となって望遠鏡の設計・組み立てからロケット発射の衝撃や探査機内で想定される温度変化に対する耐久性を確認する実験まで実施し、世界初の50kg級超小型深宇宙探査機「PROCYON」に搭載されて2014年12月に「はやぶさ2」と共に打ち上げられた。

LAICAは水素原子が放つ紫外線(水素ライマンα線)の観測に特化した望遠鏡だが、地球から3500万kmも離れた宇宙を航行しているため、地球周辺にある明るい水素コロナの外から観測できる。そのおかげで、小さいながら、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡でも不可能な観測さえ行うことができるのだ。

そのLAICAが、彗星探査機「ロゼッタ」が探査中のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)を観測し、非一様な形状をとらえた。この形は太陽光の圧力だけでは説明できず、ジェットの影響を受けている可能性が高いと考えられている。これまでにも宇宙望遠鏡が彗星の水素ガスを観測した例はあるが、球状に近い形を示していたり細かい分布をとらえられず形状が不明だったりしたため、ジェットに起因すると考えられる非一様な形状はとらえられていなかった。

(右)チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と(左)同時撮影された恒星像
紫外線波長で撮影された(右)チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と(左)同時撮影された恒星像。彗星は恒星像と比較して非一様な形状をしている(提供:立教大学)

わずか1年で低コストで開発されたLAICAが2.7億km離れた彗星の観測に成功したことは大きな成果だ。今回の観測により、ロゼッタのように彗星の近くまで行かなくても水素ガスの観測は可能であることが明らかとなり、LAICAは他の彗星におけるジェットのような活動をとらえるための効率的で有効な手段になると考えられる。今後は、ロゼッタや惑星分光観測衛星「ひさき」などによる成果と合わせて、彗星ジェットと水素ガス分布の研究を進め、その関係の解明を目指す。

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