ハワイから「アロハ!」当地でも、冬のホリデーシーズンを迎えました。家族と楽しい休暇を過ごせる、一年でもっともすばらしい時期です。
さて、今年のハワイは、エルニーニョ現象の影響で、ここ数週間8割は澄んだ夜空となっています。エルニーニョに関する情報は、米国海洋大気庁の熱帯大気海洋プロジェクト(TAO:Tropical Atmosphere Ocean project)のウェブページ「El Niño Theme Page」で見ることができます。
さて、前回お話した小惑星や彗星サーベイ、モザイク画像撮影から、ちょっと話がそれますが、お許しください。
ハワイにおけるここ数年の天気パターンといえば、コンパスが指すあらゆる方角において、実に統一感のないばらばらなものでした。湿気のほとんどは、ほぼ一年を通じて熱帯収束帯からやってきます。熱帯収束帯は、北緯10度付近にあり湿気と雲の多い領域です。
新たなエルニーニョのシーズンを迎えた今、前線が北西からやってきていて、アラスカ湾からハワイへ伸びています。衛星画像を見てください。アラスカ湾から伸びる前線の南端がハワイまで達しているのが、わかると思います。このような前線の通過によって、冷たく澄んだ空がもたらされるのと同時に、北太平洋に大きな波が発生します。また場合によって、島では風が弱まるため、島の中央にある谷に雲ができたり、午後に短時間雨が降ることもあります。その後谷の雲は吹き飛ばされ、夜には澄んだ空となります。
このような天候で、もっとも悪い影響をもたらすものが、南から吹いてくる「Kona Winds(コナ風)」です。幸いなことに、ここ数年間はキラウエア火山が噴火していないので、それほど悪い影響を及ぼしていません・・・。
コナ風の吹く日は、島の北側で空が澄みますが、島全体としては、ヴォグによって濃い霞がかったようになります。(ヴォグ(VOG):ハワイ島のキラウェア火山から噴出する火山性ガスが風でオアフ島まで運ばれ、空が白く濁ったように見える。参照:「ハワイ州のVOG情報ページ」)
我が家で、別々の方向を数分違いで撮った2枚の写真を見てください、劇的な違いです。南の方向をとった写真では、ヴォグのためにすっきりしない空ですが、北の空は澄んだ青空が見えています。写真はオアフ島の北側の海岸で撮ったもので、明らかにキラウェア火山がもたらしたヴォグによるものであることがわかります。
このヴォグですが健康に影響を及ぼすのは間違いありません。今日私は、エアコンをつけた室内にずっといますが、この原稿を書いている私の鼻は、まだやけつくように痛みます。きっと、今夜の空は(多少霞がかるものの)撮影になかなかいい条件となりそうです。
さて、話は変わりますが、わたしはこれまでの過去6年間、夜間ずっと天文台を稼動させてきましたが、ついに!初めて雨の心配をせずに、一晩中オアフ島にある2つの天文台を稼動させることができるました。
これは、すばらしいニュースです。これまでに数百枚もの画像を集めています。それは、今後このコラムの読者のみなさんとも、取り組みたい測光プロジェクトのためのものです。今回2つの天文台で、計864枚の画像が集まりました。一晩の枚数としては、これまででもっとも多い記録です。
また、全データの整理を人に依頼して、日中その作業をしてもらい、(一方、夜間私たちは通常の観測を行いつつ)、新たなソフトウェアをインストールしました。天文台にどんなものが新たに加わったのかお話しましょう。
それは、天気をモニターする新しいシステムです。天文台上空の天気がどうなっているのかを知る全天カメラがあったらどんなにいいだろうと考えたのです。レンズは視野角が70度で、カメラ自体は昔使っていたもので、決して高価なものでもありません。そのデザインについては、別の機会に詳しくお話します。
さあ、いよいよ前回お約束した通り、モザイクで得られた画像データの加工や処理についての話に移ります。いくつかのプログラムを使って、天体を探してみましょう。
最初のプログラムは、ACP Observatory Control Softwareの一部で、「Visual Pinpoint」と呼ばれているものです。スクリーンショットを見てください。下の方にいくつかタブがあり、それは小惑星や超新星を探したり、導入時の誤差解析を行うために使用します。
どんなプログラムもそうですが、撮像に使う機器にあった正しい設定をしなければなりません。最初の設定は「Solve Settings」です。設定のほとんどは工場出荷時のままですが、私は、カメラと望遠鏡に合わせた画像スケールと参照するカタログのディレクトリなどをセットしました。
画像スケールは、「CCD Calculator」という便利なフリーソフトで簡単に決定できます(The New CCD Astronomy Home Pageでダウンロードできます)。GSC 1.1カタログは、Visual Pinpointに付いていて、ほとんどの小さな望遠鏡でも(また、ほかのカタログを選んだ場合でも)、しっかり動作します。
次に、“Asteroid Settings”の項目です。画像は私の望遠鏡とカメラ用の設定で、微調整も可能。限界等級を17、120秒の露出に設定しました。それ以外に右側の“MPC Report”の項目を記入します。基本的な項目さえ埋めさえすれば、あとはもう小惑星を探すプログラムを使うことができます。
“Find Asteroids”のページは簡単です。“Find Asteroids Blank Page”(画像9)を見てください。読み込むファイルの場所があります。プログラムに画像を入れてみましょう。読み込むファイルの準備ができたら、“Find Asteroids”のボタンをクリックします。
“Visual Pinpoint Blink Target”(画像10)にあるように、Visual Pinpointは、3枚の画像中から移動している天体を検出します。画像の中央に天体が示されていますね。ここで、“Accept”ボタンをクリック、続いて“Done”をクリックすれば、自動的にその天体が記録されます(ちなみに、私はファイルのサイズを小さくしておくために、Visual Pinpointに1個の天体しか追加していません)。
以下が、Visual Pinpointのレポートです。Visual Pinpointの出力と実際のMPC(小惑星センター)レポートのフォーマットを見てください。小惑星センターあてのEメールは、かなり省略されたものになっています。
〔Visual Pinpointの出力〕
Visual Pinpoint Report MEA PinPoint Engine TEL 0.2-m f/4 Newtonian reflector + CCD NET GSC-ACT Set: E:\IMAGES\Comets October\20091015\Mosaic_2-S001-R001-C001-Clear.fts E:\IMAGES\Comets October\20091015\Mosaic_2-S002-R001-C001-Clear.fts E:\IMAGES\Comets October\20091015\Mosaic_2-S003-R001-C001-Clear.fts 15 loners in plate 1 (1%) 19 loners in plate 2 (1%) 24 loners in plate 3 (2%) Min XY = 0.5 pixels Max trail = 3.0 pixels Max speed = 1.05 deg/day Max fit res = 1.3 arcsec (0.8 pixels) Vert motion tol = +/-10 deg. Detection: 1 @ (157,712) 2 @ (161,710) 3 @ (163,714) Distance on chip: 1-2 4.92 pix 2-3 4.92 pix) Coordinate rate in RA: +0.204 min/day Physical rate in RA: +0.047 deg/day Rate in dec: +0.056 deg/day Total motion: 0.074 deg/day @ PA 040.0 deg Linear fit residual: 0.13 arcsec E:\IMAGES\Comets October\20091015\Mosaic_2-S001-R001-C001-Clear.fts E:\IMAGES\Comets October\20091015\Mosaic_2-S002-R001-C001-Clear.fts E:\IMAGES\Comets October\20091015\Mosaic_2-S003-R001-C001-Clear.fts T0003C C2009 10 16.26150 20 56 02.72 -21 58 55.9 16.0 R F59 T0003C C2009 10 16.29169 20 56 03.08 -21 58 49.8 16.0 R F59 T0003C C2009 10 16.32104 20 56 03.45 -21 58 43.8 15.9 R F59 Total rate = 0.07 deg/day or 0.175 arcsec/min, PA = 40.03 Max Residual = 0.13 Completed at 12/16/2009 3:25:19 PM
To send in your report you write it in the following format which is shorter than the Visual Pinpoint Report.
レポートを送るには、Visual Pinpoint Reportより短い以下の形式で記述すること。
[小惑星センターあてのEメール]
COD F59 (this is the Observatory code for your observatory)
CON K. Archer, 59-595 Address Road, Haleiwa HI 96712, USA [kenarcher@ironwoodobservatory.com]
OBS K. Archer, V. Reddy, R. Archer
MEA K. Archer
TEL 0.2-m f/4 Newtonian reflector + CCD (Telescope Specification)
ACK MPCReport file updated 2009.10.16 21:35:00
AC2 kenarcher@ironwoodobservatory.com
NET GSC-ACT (GSC 1.1 Catalog used)
IRO0018 C2009 10 16.26150 20 56 02.72 -21 58 55.9 16.0 R F59
IRO0018 C2009 10 16.29169 20 56 03.08 -21 58 49.8 16.0 R F59
IRO0018 C2009 10 16.32104 20 56 03.45 -21 58 43.8 15.9 R F59
The IRO0018 is the unique name of the target observation you give to your target, when the MPC Acknowledgement come they identify the actual target names, see below. The meaning of information on this line is as follows:
IRO0018 is the name your observatory gives the target. C2009 10 16.26150 is the date and time of the observation. 20 56 02.72 -21 58 55.9 is the coordinates of the target. 16.0 R is the magnitude of the target. F59 is the IAU Observatory Code for Ironwood Remote Observatory. IRO0018 (645 (example) ================================================================================== You will get a second Acknowledgement email with a rating: The receipt of a message (probably containing observations) is hereby acknowledged Your message's ACK identification string is: MPCReport file updated 2009.10.14 14:00:00 The formatting code returned the following statistics: Number of header lines read = 8 Number of observation lines read = 9 ------------------------------------------------------------------------ FEEDBACK ON COMPLIANCE OF YOUR HEADER'S TEL LINE WITH THE DOCUMENTATION Your submission contained the following TEL line: TEL 0.2-m f/4 Newtonian reflector + CCD This is what our processing software read or converted it to: TEL 0.2-m f/4 Newtonian reflector + CCD *** Your TEL line was formatted correctly *** ------------------------------------------------------------------------
The junk rating refers to non-useful material contained in your e-mail message. Your message contained 0.00% 'junk' material.
-- This is an excellent rating.
If we need to communicate designations or problems to you, a further message will follow when this batch has been processed.
**IMPORTANT NOTICE**
Note that at times (particularly near New Moon or during northern- hemisphere fall/winter) it may take 48 hours (or more) to get designations for new objects back to you.
Although your message is being acknowledged now, it is not guaranteed that it will be processed immediately.
Please do not respond to this message!
次回は、私が使ってきた Asteroid/Cometプログラムについてです。私の好きなシェアウェア・プログラムで、Astrometricaで100日間は公開されています。事前に読めば感覚的にプログラムに慣れることができるでしょうし、無料で試せるソフトウェアなので、気楽に遊んでみてください!
国際天文学連合(IAU)の小惑星センター(IAU Minor Planet Center)のウェブサイトでも、さまざまな情報がありますから、そちらもぜひ見てください!
今回は、基本的な説明に終始しましたが、始めるにはこれで十分です。ほんのすこしの辛抱強さとだれかの助けさえあれば、あなたはもう彗星・小惑星捜索者です!
では、すてきな休暇をお過ごしください!!Happy Holidays from Hawaii! Aloha!
※Ironwood Observatory(Ken Archer氏)による、リモート天文台の建設やそのほかのサービスに関する問い合わせは、「お問い合わせフォーム」から、(営業部宛まで)ご連絡ください。