先月開かれた国際天文学連合(IAU)の会議の折、Vishnu氏の発表を聞いた方から、IROのサービスに関する問い合わせがあったことを前回お話しました。今、その方々のための設計を進めています。売上につながるような具体的な成果はまだ出ていませんが、すでに、IROで実証済みの機能とそのほか多くの機能を組み合わせる段階を終えました。
契約にこぎつけた暁には、来年にかけて作業が続くことになります。その際には、みなさんに進展をお伝えします。なお、いろいろ計画する中で、その方々が今持っている資金を複数の試験に使い、その試験にIROを使用できるかという質問がありました。
過去数ヶ月にわたって、このコラムを読んでいる方は覚えていると思います。NASAのドーンミッションの小惑星探査機に搭載されているフィルターと同じものを使って、私たちはベスタの撮像に取り掛かっています。なお、探査機は、数年以内にはセレスにも到着する予定です。
ベスタの撮影は5月に終了する予定で、そろそろ屋外での試験に切り替わります。1週間の間に天気の良い夜を選んで撮像を行っています。ACPのスケジューラのおかげで、ソフトウェアのことも忘れて、夜眠れ、昼に仕事をするという日々が始まりました。朝起きれば、インターネットから素早くアクセスして、ファイルをIROのデータベースにアップロードできます。
6月には、独・マックスプランク研究所のVishnu Reddy博士が、私たちの集めたドーンの全データをまとめてくれる予定です。それが終われば、最終的な成果を皆さんにお見せできるようになると思います。
なお先ほどもお話したように、先月舞い込んだ問い合わせに関して、私たちが議論した試験は現実にはなっていませんが、私たちはいろいろな要件を考慮しなければなりません。
現在の赤道義は、毎晩すばらしい仕事をしてくれています。驚いたことに、安価な赤道義がひじょうに信頼できる機器の1つであることがわかりました。私たちが使っているのは、オリオン社のアトラスEQ−Gという中国製の赤道義に、コントローラはつけずにコンピュータへのダイレクト接続をオプションにつけたもので、価格は1200ドル以下でした。
さらに、廉価なシリアル・インターフェースをパドル・コントローラに置き換えることで、コンピュータのソフトウェアによって赤道義を制御できるようにしています。この件については、以下2つのウェブサイトで読むことができます。「THE EQMOD PROJECT」、「The Shoestring Astronomy Store - EQ Direct Interface Products」
いかなる場合でも、メーカーのために製品を売ったりすることは私の意図するところではありません。大まかに言えば、リモート天文台に関する仕事を達成するための議論や検討が大事なのです。
リモート天文台では、機器をチェックしたり、セキュリティのために何時間から数週間もの間わたしたちが物理的にそこに居る必要はありません。つまり、リモート天文台という現場へ行くのは、試験や掃除の時だけです。ヤモリさえ悪さしなければ、天文台へ行く回数はもっと少なくなるはずです。
私は最近、IROで使用するためのより丈夫な赤道義について考え始めました。DC12ボルトのバッテリーと太陽電池パネルで稼動する天文台についてお話したのを覚えていますでしょうか?これで、夜間も一年中(冬を除いて)十分な電力が得られます。実は、冬場のパフォーマンスを向上させるためにも、追加の太陽電池パネルとバッテリーが必要です。なお、安くて太陽電池システムのドレイン電圧の高くない赤道義を見つけることは可能です。
私の考えるこの種の完璧な赤道義とはどんなものか?今私たちの手元には何があるのでしょう? 正確に天体を追尾できる赤道義を使って、私たちは現在1ピクセルあたり90秒以下の短い露出で、1ピクセル3.5秒角のデータを集めています。
あえて手元のコントローラなしで、コンピュータ上のすべてのソフトウェアを使って赤道義を制御します。ソフトウェアには以下のような機能があるはずです。
- パーキング機能
- ホームポジション
- ぺリオディック補正
- パルスガイド
- 回転制御
- 同期
- 回転と追尾制限
- ACP PinPointによる位置解析
コンピュータのソフトウェアで稼動できる機能を持った、望遠鏡ドライバの例をあげましょう(画像1)。 ドライバには必要な機能が備わっていますから、ハンドコントローラは必要ありません。1つだけ確認しておかなければならないのは、赤道義が同期した状態でパーキングされているか、また電池がたえず残された状態かという点です。
動力はとても小さいため、電子機器についての心配いりません。電源は電池ですから、電圧が変化したり、下がったりすることもありません。
タカハシ Temma 2
私は、タカハシNJP Temma 2を持っていて、IROのドームでRC-250といっしょに使っていました。このシンプルさがとても気に入っていましたが、今日ほどドライバは良くなかったのです。ちなみに、私の友達が Temma ASCOM Driver というドライバを書いています。こちらを参照してください。「CCDASTRO, Inc. - Temma by Takahashi ASCOM Driver」
そのサイトを見れば、EQMOD driverと同じようなドライバでありながら、ぺリオディック補正という重要な機能のないことがわかると思います。EQMODドライバを使って制御した場合と比べて、赤道義の補正機能が低くても、タカハシは安価でなかなか良い赤道義と言えます。
タカハシのドライバ(画像2、3、4)やハードにさらに機能が加わりさえすれば、どんな赤道義にも負けない最高のものになると思います。最近ドラバイを書く友人に「ぺリオディック補正を Temma のドライバに追加できないか」聞いてみたので、そのうち彼がその作業をしてくれるかもしれません。
Bisque社 Paramount ME
多くの天体観測者がこの赤道義を使っている理由はたくさんあります。壊れにくく、何年も使えます。私は古い型を1つ持っていますが、今でも初めて使った時のようにちゃんと動きます。この赤道義はとても高価ですが、使用できる期間やサービス面を考えると、とてもリーズナブルで、払った金額以上に得られるものが大きいといえます。
またこの赤道義は、TheSky 6に直接接続できます。セットアップで行う最初の極軸合わせは、恒星に望遠鏡を向けたり、望遠鏡の回転を同期させたり、赤道義のアジャスターを北極星の中心に動かしたりするのに比べて簡単とはいえませんが、恒星と北極星の間で軸を回転させ、北極星をほぼ真ん中に導入することができます。
次に、T-Pointを使ってアラインメントの精度チェックを行います。通常、私は子午線の両側にある恒星100個で行います。そして、T-Pointの極軸合わせのスクリーン(画像5)を見れば、北極星にどれくらい近いかがわかります。
極軸合わせができたら、引き続きT-Pointを使って、導入補正のためのモデルを構築します。そのために、わたしは通常350かそれ以上の天体の位置情報を使います。これにより、どんな位置にある天体も正確に導入することができます(画像6)。
さらに、追尾の精度を高くするために、TheSkyのPro-Track(画像7)という別のプログラムを使って、モデルのデータを参照し、追尾速度を修正します。
ぺリオディックエラーは、TheSkyのプログラムでも修正されます(画像8)。外部の記録プログラムによって、ぺリオディックエラーの計測結果が10件ほど取り込まれることで、シーイングを悪くするような条件を排除するモデルが得られます。
ペリオディックエラー補正の全記録が、平均されたエラーに加わって、補正が円滑に行われるようになります。ぺリオディックエラーは、±5秒角で始まって、最後に小さな修正が行われて終了します。そのあと、赤道義は設定された画像の解像度によって数分間追尾なしで回転します。
赤道義にとってもっとも大事なことは、決して迷子にならないことです。Paramountには、最後の位置に赤道義を同期させるホームスイッチがあります。 同期はめったに必要にはならず、私は数年間でたった2回しか行っていません。
全ての赤道義は、共通してASCOMの標準規格です。つまり、ASCOMと互換性のあるどんなプログラムでも、動くわけです。(参照:ASCOM Standards for Astronomy)。ASCOMの一番好きなところは、ある程度のスキルを持つ人々同士が誰でも、互いの行ったことをシェアできる点です。ドライバを書いたり、試したりするグループがあって、参加は自由にできます。プログラマーでなくても、ドライバ用ベータ・テスターでも参加できます。あなたの経験は、ドライバの有用性の一部となり、他の人々と共有されるわけです。
最後に、あなたはどんな赤道義を選びますか?それは、まず予算、そしてどんなことをしたいかによります。廉価なものでも、労苦を伴いながらも、ちゃんと役目を果たしてくれる場合もあります。またクオリティが高ければ、買ってきて箱から出してすぐに使うことができます。
※Ironwood Observatory(Ken Archer氏)による、リモート天文台の建設やそのほかのサービスに関する問い合わせは、「お問い合わせフォーム」から、(営業部宛まで)ご連絡ください。