年末年始、読者の皆さんはきっとご家族とすばらしい休暇を過ごされたことと思います。一方、わたしたちは、新プロジェクトのため、休暇中も忙しく働いていました。
私の友人で、仕事仲間でもあるVishnu Reddyが米・ノースダコタ大学で宇宙科学の博士過程を無事終了しました。彼は、12月初めまでとても忙しくしていました。インターネットを通じて、私たちは彼の卒業式に出席することができ、とてもうれしく誇りにさえ感じました。彼は、私の息子と同じ年なのです。
さて、博士となったVishnu Reddyと私は、ある観測プロジェクトについて、昨年末までの数ヶ月間ずっと話し合ってきましたが、ようやくそのプロジェクトが動き出しました。わたしたちにとって、ひじょうにエキサイティングなプロジェクトです。今後の進展を含め、みなさんに詳しくお話していきましょう。
わたしたちは、2つの小惑星をモニターし、測光観測するプロジェクトを開始しました。小惑星は「ベスタ」と「アテ」です。わたしたちが集めたデータについては(あえて私がここで繰り返すより)、Vishnu氏のブログ「Vishnu Reddy's Personal Blog - All in the day for an astronomer」を見てください。
私は、今回初めて測光撮影に挑戦することになりました。実は、天文台で得られたデータを目にするまで、すばらしい画像が撮れていると思っていました。Vishnuは、マウナ・ケアに何年も出入りしていたので、観測研究には、すばらしい透明度の画像を期待していたのです。測光撮影にあたり、私は当初Vishnuについて、単にとても厳しい人なのだと思っていましたが、そのうち、測光のためには、私自身の撮影スキルの向上が必要なのだと自覚するようになりました。今後みなさんは、わたしたちがすばらしい画像を手に入れるためにあらゆることに挑戦した経緯を知ることになりますが、おかげで今では、数日ごとにキャリブレーション画像を得ています。
Vishnuは、カメラを取り外して、直線性テストをしてはどうかと提案してきました。唯一の問題は、天文台が辺ぴな場所にあり、周囲に適当な場所がないことです。つまり、カメラを取り外し、クリーンルームまで持っていかなければなりません。私は、ものが壊れたりしない限り、かたくななまでそのままにしておく主義です。しかし、ついにVishnuが露出オーバーに気づき、露出時間を短くしたのです。これで、クリーンなデータが得られるようになりました(詳細はさきほどお知らせしたVishnuのブログを読んでください)。
そのほかに私たちは、Vishnuの観測研究のために、できるかぎり多くの画像を集める必要がありました。ある一定枚数の画像を集めても、すべてが良いとは限りません。できるかぎりの画像を集めることが、研究に必要なクリーンなデータの保証につながるのです。
これまで説明したように、わたしたちは「Observing Plan」というスクリプトを使って、ACPと天文台を稼動させてきました。自動でデータを集めてはいますが、天文台を監視しなければなりませんでした。その理由は、わたしたちが“transient weather event's”と呼んでいる、雲の通過です。雲が上空を通過するたびに撮影を一旦中止しなければならなかったのです。一晩中モニターし続けて、昼間働くのでは身が持ちません。そこで、解決策が必要となりました。まず安価な方法からスタートし、満足な解決策に行き当たるまで、新しいものに挑戦し続けました。今では、わたしたちは、夜間と天文台を無人で稼動させ、雲が通過すれば撮影を自動で中断できるようになりました。また、天文台を閉める前に、自動でフラット補正、ダーク、バイアスも行えるようになりました。
こうして、わたしたちが夜間安心して眠れ、データを収集できるようになるまでの詳細をすべてここで書くことは無理ですが、掻い摘んで説明しましょう。
まず最初に、その辺にあった古いパーツを使って全天カメラを組み立てました。天文台を守る雲の検出器がすでにありましたが、通過する雲なのか、それとも空を覆う雲なのかなど、外のようすをリアルタイムで知りたかったのです。天文台のために必要なものでしたが、まずは組み立ててみて、目的を果たせるかどうか、自宅でテストです。
過去に、0ルクスのビデオカメラを使って、防犯用の鏡に向けて設置する全天カメラを作ったことがありました。このカメラは、日中や明るい月夜の晩に、なかなかよく働いてくれました。ただし、闇夜では何も見えません。
私の全天カメラ第1号「R2D2」の写真(画像1)を見てください。これは、遠隔ユーザーが暗くなる前に空の状態をチェックするのに便利でした(私がいつも付き添って、天気情報を提供できませんから)。また、撮影した写真は簡単にインターネットで送信でき、他のユーザーと情報を同時に共有することもできました。ここで、気をつけてほしいのが、カメラは空を写す鏡の方に下向きになっていたことです。数日後に、鳥対策が必要になり、たくさんの細い棒を並べて立てて、鳥が止まって鏡を汚したりしないようにしました。
今回は、星や雲がよく見えるようなの新しいカメラをインターネットで探してみました。するとほとんどのカメラのセットはとても高価で、一定レベルのプログラミングの知識(現在の私には、そのような知識はありません)を必要とするものでした。しかし節約のためにも、安くシンプルに作る必要があったのです。
そして、DSIカメラ用のレンズ・パーツを販売している会社を見つけました。実は、DSIカメラは、わたしの自宅にあるスペアパーツ入れの中にありました。(こちらの画像をご覧ください。パーツ DSIFとT2CAの画像)これらのパーツがあれば、Cマウントを使っているDSIのノーズピースをTスレッドアダプタに換えられるのです。
私はパーツが届くと、トラックの荷台に座って、カメラとノートブックパソコンをつなぎテストを行いました。星像が丸くならなかったものの、画像はなかなかよく、星や雲などを見るには十二分でした。星像が丸くならない理由は、ピクセルが9.6 x 7.5ミクロンと正方形でないためです。もっと新しいミードのカメラならピクセルは正方形です。しかし今回は節約して、持っていた古いパーツを使ったのですから仕方がありません。
カメラを作動させるソフトは持っていましたので、すぐに目指していたゴールにたどりつきました。しかし、天文台とは別に単独で撮像用ソフトを作動させるコンピュータが必要でした。そこで、再びスペアのパーツや古い道具の中から必要な部品を見つけて、コンピュータを組み立てました。ここまでにかかったコストは200ドル。カメラの購入費が100ドル、レンズパーツが80ドル、および運賃でした。
CCDカメラを持っている人なら誰でも知っていることですが、カメラはカバーなしで、一日中朝から晩まで外に出して置きっぱなしにはできません。しかし、今回のカメラは、半永久的に外に設置されるのは間違いありません。透明なプラスチック製ドームを販売している会社はインターネットにあるのですが、カメラをドームに留められるケースを作らなければならず、高くつく注文になると思いました。
最終的には、防犯用カメラを扱う地元(ハワイ)の会社に、何かいいものがあるかどうかたずねてみたところ、ドーム付きの壊れたカメラが数台あるというのです。私は各10ドルで購入しました。なかの古いカメラを取り出してDSIをケースに入るか試したところ、DSIは大きすぎました。
ドレメルの工具で数時間慎重に作業し、カメラを設置しました。全天カメラは一時的に裏庭にあるロールオフ式屋根の古い天文台に設置してあります。その写真(画像2)を見てください。
そのほか、IROは遠く離れているため、インターネットを使って、容量の小さなファイルをウェブページに送信する方法が必要でした。
でも、そのためには、わたしたちのプログラミングのスキルが足りませんでした。しかし、インターネットの情報で救われました。FITS画像をJPG形式に変換し、インターネットに流せるソフトウェアを見つけたのです。
おかげで、全天カメラの画像、気象台の情報、ハワイの衛星画像とを合わせて、状況が一目でわかるようになりました。(画像3)を見てください。現在わたしたちは、これをIROのメインとして使っています。
以前お話したように、わたしたちはモニターしながら、できるだけより多くの画像を撮影する方法を探すのにもっとも力を入れてきました。IROを建設し始めたとき、次の新しい天文台の設計では、そのような機能を追加しようと考えていました。
目下のところ、IROはモニターを必要とすることもなく、一晩中稼動し、当時考えていたカメラのデザインも必要としていません。この現状を、夜空をモニターする方々と共有するのは、興味深いことだと思います。というのも、これは流星カメラにも使えるからです。
もしも、何かコメントや質問がありましたら、Vishnuのブログ上にお寄せください。みなさんからのメッセージをお待ちしています。
では、また来月まで”Clear Skies” アロハ!
※Ironwood Observatory(Ken Archer氏)による、リモート天文台の建設やそのほかのサービスに関する問い合わせは、「お問い合わせフォーム」から、(営業部宛まで)ご連絡ください。