小惑星探査機「ドーン」のミッション
先月に続いて、今月も忙しい月となりました。ドーンのミッションに関わる作業と、来月から数ヶ月間行われる地域の教育支援活動の準備に追われていました。
友人であり、仕事仲間であるVushunu Reddy博士とは、ドーン・ミッションのため、できる限りのデータ収集を進めてきました。ここ数週間ほどは天気が味方してくれませんでしたが、3夜分のデータを集められ、小惑星ベスタの画像も1600枚を超えました。やっと、澄んだ夜空に恵まれてきたので、さらに5月末まで撮影に臨みます。
(先月もお話したように、私たちは、NASAの小惑星探査機ドーンに搭載されている同じフィルターを使って、ドーンの探査対象である小惑星を地上から観測します。そのため)ベスタの画像の較正ツールとして、太陽のアナログ画像が必要です。太陽のアナログ画像の使用に関しては、米・宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のNICMOS Instrument Handbook for Cycle 17 - Chapter 4 Imaging - 4.2 Photometryに詳しい情報が掲載されていますので、参照してください。
先日Reddy博士は、米・テキサス州ヒューストンで行われた国際天文学連合(IAU)の会議に出席しました。
そこで彼は、ドーンと同じフィルターを使って集めたIROのデータを提出しました。自動制御の小さな天文台が興味深い仕事をしたということでかなり反響があったようです。たくさんの方々がIROに興味を持ってくれた結果、数件の問い合わせが届きました。現在、その方たちのプロジェクトのお手伝いができるかどうかについて、話を進めているところです。
現時点で、わたしたちのデータは未発表ですが、今後2ヶ月で十分なデータが集まれば、いよいよ発表となる予定です。なお、ドーンのミッションについては、マックス・プランク太陽系研究所(MPS)の「Dawn Framing Camera Homepage」を参照してください。
天文研究所(IFA)
ところで4月18日に、私たちが地域教育支援活動を行う機会がやってきます。ハワイ大学天文研究所の一般公開が始まったのは、今から5年前のことで、わたしの友人と家族からなるグループは、子供たちのために、アメリカ国内の人気TVクイズ番組「ジェパディ(Jeopardy)」のようなゲームを行ってきました。
クイズに正解すると賞金がもらえる番組の内容を真似て、私たちは毎年天文に関する問題を用意します。私たちは、このゲームを「アストロ・ジェパディ」と呼び、子供たちの間でも人気となっています。子供たちは親と点数を競い合うのですが、たいていは子供たちが勝者となります。そのようすを見るのは実に楽しいものです。なお、子供たちの知識が年々上がってきているので、今年は新しい質問を用意して、少しハードルを高くするつもりです。
ゲームの進行をつとめる2人の女性です。彼女たちは「アストロ・レディー(Astrono Ladies)」と呼ばれており、子供たちと仲良しで、とても熱心です。この愛称はハワイ大学 天文研究所のある科学者によってつけられました。
私たちは、この活動を通じて子どもたちにあるメッセージを伝えるようにしています。それは天文学が行われている場所は、高い山の上に建てられた大きな天文台だけではないということです。そこで毎年、私の小さな天文台を紹介するためにプレゼンテーションも行っています。担当しているのは、私の息子Reidです。
一般公開は昼間なので、IROを使うことはできません。そこで、ライブ・デモンストレーションのためにほかの場所の天文台と会場をオンラインで結びます。昨年は、イスラエルの望遠鏡を選びましたが、残念なことに当日現地が一晩中曇天だったため、大学の天文台にのぼって、全天カメラを見ました。
今年は、ミシシッピー州のジャクソンにあるジャクソン州立大学の2つの天文台を利用する予定です。実は、何年か前にこれら2つの天文台のメンテナンスを行ったことがあるのです。両天文台の中と外には、リモート・カメラが設置されています。
なお、読者の中で、4月18日にハワイに来られる方がいましたら、ぜひ一般公開に足を運んでください。詳細は、「University of Hawaii Institute for Astronomy - Open House 2010」をご覧ください。
上級天文コース(Hornors Astronomy Course)
今年、私たちは上級天文コースを教えます。このコースはカレッジ入学のために、追加単位の取得を希望している高校生を対象にしたものです。
当初、大学レベルの科目(A.P. Course)を教える予定でしたが、初めての夏季プログラムですので、負担の少ないコースを選び、まずは教える経験を積むことにしました。
私は天文で修士号を持っていますが、教室で天文を教えることに、多くの時間を費やしてきたわけではありません。幸い、私は航空会社で機長として働いていた時、プロのパイロットを対象に飛行や航空機のシステムについて教えた経験があります。それでも、人に教えるということは、やはり大きなチャレンジと言えます。
このプログラムは、普通の天文 101(Astronomy 101(ワン・オー・ワン):大学の基礎的な入門講義)のクラスとは多少違います。クラスは、1日4時間、1週間に6日、期間は2週間です。今年、私たちは3つのクラスを担当します。
〜コース概要〜 Hornors Astronomy Course 101
主な内容: 天文学入門、星空案内、気象学入門、天文台と稼動システムに関する入門、リモート天文台の操作、自動撮像のためのスクリプト、実践:天体写真撮影と小惑星捜し、(コースの終わりに)Ironwood 天文台によるライブ・スター・パーティー
今年の夏は、高校生を対象に少し異なる内容を実施します。それは、本を通して机上で学ぶのではなく、実際にリモート天文台を操作してもらうのです。最初に星空で天文の基礎を学び、続いて夜間撮影の計画を詳細に立てます。また気象学についての短いコースもあります。
観測データを収集し始めたので、LRGB合成の方法なども教えます。これにより、生徒は専門家が行っているデータ収集や画像加工の気分を味わえると思います。また、チームを組んで作業することで、本当の天文学者のように、互いに協力し合うやり方も学ぶことができると思います。コースの最後に、Ironwood Observatoryのドームで、スター・パーティーを開きます。
なお、初年は入門コース、今後3年間で上級クラスを加えて、最終的には、初心者から上級者向けの計3つのコースを教えていきたいと思っています。
アストロ・キティ(Astro-Kitty)
今回は読者の皆さんに、私たちの貴重なスタッフをご紹介します。それは、うちのペットであるイジー(Izzy)です。またの名をアストロ・キティ(Astro-Kitty)と言います。
イジーは、テレビ会議システムを通じて、日本の教室にも登場したことがあります。電子装置から聞こえてくる、生徒の質問や答えの声に興味を示したイジーがテレビ画面に現れると「ネコ、ネコ!」と興奮した生徒の声が聞こえてきたのを覚えています。
夜行性の猫の暮らしは、天文に完璧なまでにマッチしています。話が少々それますが、ハワイにはヤモリがいて、天文台の暗い隅っこを好みます。実は、イジーはヤモリの名ハンターなのです。ヤモリが陰から出てくるのを数時間もじっと待ち構えています。彼女の我慢強さと狩猟のおかげで、ヤモリが増えずに済みます。
イジーは、天文台を訪れる多くの天文学者を迎える公式歓迎団でもあります。彼女はソファの上にお気に入りの場所を持っていますが、(普段は文句をいいますが)お客様が来たときだけは、ソファを快く譲ってくれる猫としても知られています。
最後にハワイの夜空に星が輝く晩、星を眺めるアストロ・キティの写真(画像6)をご覧いただきながら、今回はこの辺で失礼します。ではまた次回まで、アロハ!
※Ironwood Observatory(Ken Archer氏)による、リモート天文台の建設やそのほかのサービスに関する問い合わせは、「お問い合わせフォーム」から、(営業部宛まで)ご連絡ください。