さまざまに分析される、地球に似たタイタン

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【2012年2月24日 NASA

この時期、おとめ座やうしかい座などの春の星座を引き連れ深夜に南東の空に輝く土星。その衛星タイタンの、冬から春への変化をとらえた画像が公開された。地球によく似た地形を持つこの星の内部構造など、さまざまな研究成果が発表されている。


土星最大の衛星「タイタン」について、探査機「カッシーニ」のデータをもとにした一群の研究論文が発表された。季節の移り変わりや内部構造など「タイタンの全体像を知る新たなピース」(「カッシーニ」チームのConor Nixon氏)となる成果だ。

冬から春ヘ 雲間から見える北半球の地表

タイタンの北半球の4年間の変化

タイタンの北半球を2006年12月から2009年6月までとらえたようす。赤外線の擬似カラー画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/CNRS/LPGNantes)

フランス国立科学研究センター(CNRS)のStephane Le Mouelic氏は、季節の移り変わりを伝える北極付近の雲の変化に焦点をあてた。「カッシーニ」が4年間にわたってとらえた画像では、北半球が冬から春に変わるにつれて雲が消えて薄くなっていく様子がわかる。

この雲は「カッシーニ」が土星探査を開始したばかりの2004年にすでに存在しており、メタンが主成分と思われる。北半球に半分ほど太陽光が当たってよく見えるようになった2006年12月ごろには、雲が北緯55度ほどまで覆っていた。だが2009年には雲はちりぢりになり、その下にある炭化水素で出来た「クラーケン海」やその周囲の湖が現れてきているのがわかる。

「これらの画像を追うことで、タイタンの大気は季節ごとに変化するということが段々確実になっていきました。これから北半球の地表がもっと露わになり、湖や海が見えるのが待ち遠しいです」(Le Mouelic氏)。

昼夜の温度変化

季節による変化だけではない。「カッシーニ」の赤外線観測による温度データからは、昼夜の変化もとらえられた。Valeria Cottini氏(米ゴダード宇宙飛行センター)が、分厚い大気を見透かして地表を観測できるような波長で観測を行ったところ、約16日というタイタンの長い一日の間、日の出前後や午後は他の時間帯よりも1.5度ほど暖かくなっていることがわかった。

摂氏約マイナス180度という極低温の環境で1.5度気温が上がっても、ちっとも“暖かく”はない、と思われるかもしれない。だが「昼は夜より気温が高い」という、地球では当たり前のことがタイタンでも起こっているということが実際に示された意義は大きい。

タイタンの内部構造

「カッシーニ」の観測に基づいたタイタンの内部構造

「カッシーニ」の観測に基づいたタイタンの内部構造。クリックで拡大(提供:A. D. Fortes/UCL/STFC )

タイタンには峡谷や湖など、地球とよく似た地形があることが知られている。Dominic Fortes氏(英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)はタイタンの内部構造とその関連について調べるため、タイタンの内部について一連の仮説モデルを作成したうえで「カッシーニ」による電波観測データと突き合わせた。

その結果、タイタンの内部で一部、または全面的にコアが分化している可能性があるとわかった。コアの密度が外層よりも高く、かつ考えられていたよりも低いということだ。この理由として、コアに氷が多く含まれているる、あるいは岩石が水と合成して低密度の鉱物が生成されているという2通りが考えられる。

地球などの岩石惑星は完全に分化しており、高密度の鉄のコアを持っている。だが今回考えられたモデルのコアは金属ではなく、「カッシーニ」のデータ通り、比較的低温の含水岩石の構造を採用している。このモデルでは、タイタンの大気に含まれるメタンやアルゴン40がコアから抜け出るとは考えられず、その存在の説明が難しいことも示されている。

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