宇宙飛行士の健康問題解決に貢献か、体長1mmの線虫
【2015年1月14日 NASA】
国際宇宙ステーション(ISS)で、シノラブダイティス・エレガンス(以下シー・エレガンス)と呼ばれる体長約1mmの線虫を使った実験が宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって行われている。また、シー・エレガンスを使った別の実験「微小重力下におけるシー・エレガンスの筋線維変化(Alterations of C. elegans muscle fibers by microgravity (Nematode Muscle))」(訳はアストロアーツによる)も今年実施予定となっている。
シー・エレガンスはどこにでもいる線虫の一種で、土の中にいて細菌などを捕食している。その体は約1000個の細胞から作られており、高等動物と同じように筋肉系、消化系といった多様な組織を持っている。また、受精後に1つの細胞が分裂を繰り返して多様な組織を作りあげる過程も詳細に解析されているうえ、全ゲノムの解読も完了している。そのため、ヒトのモデル生物として、広く利用されている。
シー・エレガンスは過去にもISSにおけるJAXAの実験で利用されており、微小重力下で宇宙飛行士に生じる筋萎縮の発生を解明するための1つのモデル系になる可能性があることなどが報告されている。
JAXAが現在行っている実験では、シー・エレガンスのDNAが調べられる。ISSで4世代のシー・エレガンスが育てられ、成虫から幼虫まで異なる段階で保存され、今月中に地球へ送り返されることになっている。
また、今年実施予定の実験では、筋繊維と細胞骨格(細胞の構造上の骨組みを決めるタンパク質繊維)が微小重力下でどのように反応し変化するかを調べる。シー・エレガンスを微小重力下で育て、同時に遠心分離機を使って重力1Gの環境を作り、成長と変化が調べられる。
「4世代のシー・エレガンスの組織はISSで培養されて、異なる成長段階にある組織が調べられます。わたしたちの研究では、なぜどのようにして、微小重力下で健康上の変化が起こるのかを明らかにします。そして、宇宙という環境に適応する際に、基本的なDNAが変化せずに第一世代の細胞から次へと引き継がれるのかどうかを明らかにします。」(両実験の主任研究員である東北大学の東谷篤志教授)
NASAのISS主任研究員であるJulie Robinsonさんも「わたしたちは、ISSにおける宇宙飛行士の健康保持を目指した研究を進めています。この研究は同時に、地球上で病気や老化のため日々生活に制限を強いられてる人々をも救うことにつながります」と話している。
実験結果から、宇宙に滞在する宇宙飛行士が抱える骨と筋肉の減少問題や、地球上で筋肉や骨の病気と闘う人々の対処方法が見つかることが期待されている。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- NASA: http://www.nasa.gov/
- JAXA: http://www.jaxa.jp/index_j.html
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