100万歳の若い星に複雑な有機物を検出

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455光年彼方に位置する生まれたての星の周囲に、複雑な有機分子であるアセトニトリルが大量に発見された。生命誕生のカギとなる物質が太陽系以外でも普遍的に存在することを示す、重要な成果だ。

【2015年4月10日 ヨーロッパ南天天文台

455光年彼方の恒星「WMC 480」に複雑な有機分子が見つかった。おうし座分子雲の中にあるWMC 480は生まれて100万年ほどのとても若い星で、自身の材料となった塵やガスがうずまく円盤(原始惑星系円盤)を周囲にまとっている。Karin Öbergさん(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)らがアルマ望遠鏡で電波観測したところ、恒星からおよそ45億~150億km離れた円盤外縁に、地球の海の水に匹敵する量のアセトニトリル(CH3CN)が検出された。

アセトニトリルなどシアン化物に含まれる炭素‐窒素結合(強く結びついた炭素と窒素)は、生命の材料であるアミノ酸の重要なパーツでもある。原始惑星系円盤でこうした複雑な有機分子が見つかるのは初めてのことで、豊富な水と有機分子がそろう太陽系は珍しい存在ではないという新たな証拠になる。また今回見つかった量の多さから、円盤の中で有機分子がとても速いペースで作り出されていることがうかがえる。

MWC 480の原始惑星系円盤とアセトニトリル分子のイメージ図
MWC 480の原始惑星系円盤とアセトニトリル分子のイメージ図(提供:B.Saxton (NRAO/AUI/NSF))

アセトニトリルが検出された場所は、太陽系でいえば海王星を越えた外側の領域「カイパーベルト」にあたる。カイパーベルトには太陽系が生まれたころの物質を閉じ込めた氷の小天体が分布しており、ときおり太陽系の内側へ迷い込んで彗星として姿を現す。かつてはこれらの彗星が地球に衝突することによって水や有機物がもたらされ、生命誕生のきっかけになったとも考えられている。

WMC 480の円盤の中で惑星が生まれつつあるかどうかは未確認だが、太陽系の生命誕生のシナリオを実現させた小道具が、他の惑星系でも普遍的に存在することを示した重要な成果といえるだろう。

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