メトカーフコンポジットで尾や頭部を描出
彗星の移動に合わせて画像を合成する「メトカーフコンポジット」
天体写真では画像の質を向上させるために多数枚を撮影して合成することが一般的です。彗星の拡大撮影も同様ですが、彗星は背景の恒星に対してどんどん移動していくので、恒星を基準として画像を合成すると彗星の頭部は線状になり、尾はブレてしまいます。
そこで、反対に彗星を基準として画像を合成すれば、尾の複雑な構造や頭部の様子がよく見えるようになります。このような手法を「メトカーフコンポジット」と呼びます。
天体画像処理ソフト「ステライメージ9」を使うと、このメトカーフコンポジットが簡単に行えます。
画像を読み込む
- ステライメージを起動し「自動処理モード」を選択すると「コンポジットパネル」が開きます。
ウィンドウ下部の「ライト」リストの左上にある[+]ボタンで、撮影画像を選択します。
「ダーク」(熱ノイズの影響等を除去)や「フラット」(周辺減光の影響等を除去)も使用すると、画像の質がさらに良くなります。
コンポジットを実行
彗星基準か、恒星基準か
2023年2月、おうし座のヒヤデス星団や分子雲に接近したズィーティーエフ彗星(C/2022 E3)。彗星基準で合成した画像と恒星基準で合成した画像を合成(180mm F2.8、ISO 1600、90秒×50枚/撮影:谷川正夫)。
- 彗星基準のメトカーフコンポジットでは、彗星を止めて表現できますが、背景は流れてしまいます。
同じ画角内に星雲等がある場合、その天体の描写が乱れてしまうことになり、不都合です。 - 彗星の移動が遅ければ「恒星基準」で合成することも一つの方法です。
- また、彗星はメトカーフコンポジット、背景は恒星基準コンポジットして、その両者を合成するという処理方法もあります。
複雑な手順を要しますが、彗星と星雲の両方を精緻に美しく表現することが可能になります。
- 動画でもステライメージの活用法をご覧いただけます。