紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)

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☄ メトカーフコンポジットで尾や頭部を描出

彗星の移動に合わせて画像を合成する「メトカーフコンポジット」

天体写真では画像の質を向上させるために多数枚を撮影して合成することが一般的です。彗星の拡大撮影も同様ですが、彗星は背景の恒星に対してどんどん移動していくので、恒星を基準として画像を合成すると彗星の頭部は線状になり、尾はブレてしまいます。

そこで、反対に彗星を基準として画像を合成すれば、尾の複雑な構造や頭部の様子がよく見えるようになります。このような手法を「メトカーフコンポジット」と呼びます。

天体画像処理ソフト「ステライメージ9」を使うと、このメトカーフコンポジットが簡単に行えます。

画像を読み込む

撮影画像を開く
  • ステライメージを起動し「自動処理モード」を選択すると「コンポジットパネル」が開きます。
    ウィンドウ下部の「ライト」リストの左上にある[+]ボタンで、撮影画像を選択します。
    「ダーク」(熱ノイズの影響等を除去)や「フラット」(周辺減光の影響等を除去)も使用すると、画像の質がさらに良くなります。

コンポジットを実行

天体と機材を選択
  • ウィンドウ右の「コンポジット」で、「処理」で[メトカーフ]を選択します。
    さらに[設定]ボタンでダイアログを開き、対象となる彗星を選んだりレンズの焦点距離を設定したりします。
    ※天体を指定するにはステラナビゲータステラショットが必要です。インストールしていない場合も、座標等の入力によってコンポジットは可能です。
  • 「方式」(通常は[加算])を選び、[実行]ボタンをクリックすると、メトカーフコンポジットが行われます。
  • 合成後の画像の仕上げは「詳細編集モード」で行います。
メトカーフコンポジット/恒星基準コンポジット 2023年1月のズィーティーエフ彗星(C/2022 E3)。メトカーフコンポジット(上)と恒星基準コンポジット(下)。恒星基準では頭部が線状に伸び、尾がほとんど見えなくなっているが、メトカーフコンポジットでは頭部が止まり、尾の構造が見える(280mm F3.9、ISO 3200、120秒×31枚/撮影:谷川正夫)。
加算/加算平均(σクリッピング) メトカーフコンポジットでは恒星が線状になり、ややうるさい印象を受ける。コンポジットの方式で[加算平均(σクリッピング)]を使用すると、恒星像が落ち着く。
※σクリッピング:複数枚の画像で、周りよりも突出したピクセルを除外する機能。宇宙線や静止衛星を消す目的で使用されることが多い。

彗星基準か、恒星基準か

彗星・恒星基準合成
2023年2月、おうし座のヒヤデス星団や分子雲に接近したズィーティーエフ彗星(C/2022 E3)。彗星基準で合成した画像と恒星基準で合成した画像を合成(180mm F2.8、ISO 1600、90秒×50枚/撮影:谷川正夫)。
  • 彗星基準のメトカーフコンポジットでは、彗星を止めて表現できますが、背景は流れてしまいます。
    同じ画角内に星雲等がある場合、その天体の描写が乱れてしまうことになり、不都合です。
  • 彗星の移動が遅ければ「恒星基準」で合成することも一つの方法です。
  • また、彗星はメトカーフコンポジット、背景は恒星基準コンポジットして、その両者を合成するという処理方法もあります。
    複雑な手順を要しますが、彗星と星雲の両方を精緻に美しく表現することが可能になります。
  • 動画でもステライメージの活用法をご覧いただけます。

「ステライメージ9」を使うと、

  • 紫金山・アトラス彗星の動きに合わせてスタック
  • 頭部から尾まで、彗星の姿を精細に描出

※機能や仕様について、詳しくは製品ページをご覧ください。試用版もあります。

星ナビ2024年10月号

この特集コンテンツは月刊「星ナビ」2024年4月号付録の小冊子、および10月号(20ページ特集)の内容を再構成したものです。誌面では各コンテンツについてさらに詳しく解説しているほか、彗星の特徴や科学的興味の紹介、他の星図なども掲載しています。

11月号でも詳しい星図や見え方を解説しています。
星ナビ2024年11月号