世界初、ISSで月の重力を模したマウス長期飼育に成功
【2019年6月27日 JAXA】
国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟内にある研究プラットフォーム「MARS」では、ターンテーブルの回転により重力負荷を変えることで地上、火星(地球の約3分の1)、月(同6分の1)と同じ重力環境を作り出し、その中で小動物を飼育することができる。
この「MARS」で今年5月4日から6月5日までの32日間にわたり、月と同じ重力環境下で野生型マウス6匹の長期飼育実験が実施された。同施設でのマウス飼育実験は4回目だが、月の重力を再現しての実験は世界で初めてとなる。
実験では、同じく再現された微小重力状態や地上重力状態と比べると、月面重力環境では餌を食べるときの動作など、その活動や身体の使い方の違いがはっきりと現れた。
飼育実験後、6匹はドラゴン補給船に搭載され無事地上に帰還した。
今後は、第1回目のマウス飼育ミッションで得られたデータと今回取得されたデータの比較から、地球の約6分の1の重力下における生体の変化の解析が行われる。将来の月・火星有人探査に向けても有用な示唆が得られることが期待される。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- JAXA:世界初、宇宙空間でμg から1g を可変できる実験環境"MARS"が完成(2017年9月8日)
- 小動物飼育装置(Mouse Habitat Unit: MHU)
- 小動物飼育ミッションに関係する学術論文(地上予備実験をのぞいた、宇宙ミッションとしての成果):
- Nature(Scientific Reports):
- Down-regulation of GATA1-dependent erythrocyte-related genes in the spleens of mice exposed to a space travel
- Hypergravity and microgravity exhibited reversal effects on the bone and muscle mass in mice
- Development of new experimental platform ‘MARS’ーMultiple Artificial-gravity Research Systemーto elucidate the impacts of micro/partial gravity on mice
- International Journal of Molecular Sciences:Impact of Spaceflight and Artificial Gravity on the Mouse Retina: Biochemical and Proteomic Analysis
- Nature(Scientific Reports):
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