オシリス・レックスの着陸地点が「ナイチンゲール」に決定

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NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」がサンプル採取を行う地点として、小惑星ベンヌの北半球にある候補地「ナイチンゲール」が選ばれた。

【2019年12月16日 NASA

「オシリス・レックス」の運用チームは、これまでにサンプル採取の候補地点を4か所選定し、8月に発表した(参照:「オシリス・レックスの着陸候補地点を4か所選定」)。運用チームがその後数か月にわたって4か所の候補地を低空から調査した結果、「ナイチンゲール」と命名された候補地がサンプル採取に最適だと結論づけられた。この地点はベンヌの北緯56度に位置する直径140mのクレーターの中にある。

ナイチンゲール
オシリス・レックスのサンプル採取地点に選ばれた「ナイチンゲール」。中央は比較のために描かれたオシリス・レックスの機体のサイズ。太陽電池パネルを含めた機体の幅は6.2mで、日本の「はやぶさ2」(幅6m)とほぼ同じだ。画像クリックで表示拡大(提供:NASA/Goddard/University of Arizona、以下同)

「4か所の候補地点すべてを徹底的に評価し、最終決定を行いました。粒の細かい物質が大量に存在すること、そして探査機が安全性を保ちながら表面物質を容易に採取できることという観点から、『ナイチンゲール』が条件を最も良く満たし、ミッションの成功確率が最も高いとされました」(米・アリゾナ大学 オシリス・レックス主任研究者 Dante Laurettaさん)。

ナイチンゲールのレゴリス(砂や石などの表面物質)は暗い色で、画像からはこのクレーターは比較的滑らかな地形であることがわかる。ここは北半球の高緯度にあるため、他の場所よりも温度が低く、表面物質がよく保存されている。クレーターも比較的若いと考えられていて、新鮮なレゴリスが露出している。この場所ならベンヌの始原的なサンプルを採れる可能性が高く、サンプルからベンヌの歴史に迫ることが可能だと考えられる。

ナイチンゲールはベンヌの中では最も条件が良いが、それでもこの地点でのサンプル採取にはいくつものハードルがある。もともとの計画では、サンプル採取を行う場所の広さは直径50mを想定していた。ナイチンゲールがあるクレーターはこれよりは大きいが、オシリス・レックスが十分安全に着地できる面積となるとずっと小さく、直径約16mの範囲しかない。つまり、オシリス・レックスはきわめて正確にベンヌ表面の着地地点を狙わなければならない。また、ナイチンゲールには、クレーターの東の縁に建物くらいのサイズの岩塊が存在する。これは、着陸後に上昇して戻る場面で障害となる可能性がある。

運用チームでは、「オスプレイ」と名付けられた地点をサンプル採取の予備地点として選んだ。ベンヌの重力は非常に弱いため、最初のサンプル採取の際に探査機のスラスター噴射によって着陸地点の表面が大きく乱され、2回目の採取が難しくなる可能性もある。もし「ナイチンゲール」で2回目のサンプル採取ができない場合には、「オスプレイ」で採取を試みる予定だ。

候補地点
8月に発表されたオシリス・レックスのサンプル採取候補地点4か所の画像。エジプトに生息する鳥の名前から、「ナイチンゲール(サヨナキドリ)」「キングフィッシャー(カワセミ)」「オスプレイ(ミサゴ)」「サンドパイパー(シギ)」と命名されている。今回「ナイチンゲール」がサンプル採取地点、「オスプレイ」が予備の地点に選定された

候補地点の地図
ベンヌ表面での4か所のサンプル採取候補地点の位置。「ナイチンゲール」は北緯56度に位置する。画像クリックで表示拡大

「ベンヌはとてつもなく荒れた地形でオシリス・レックスに戦いを挑んできました。運用チームでは、より正確な、しかしより複雑な光学航法の技術を使い、狭い場所への着陸を可能にすることで、この困難に対応しました。オシリス・レックスには、採取地点の内部や近くに障害物があって接触しそうな場合には、それを認識して自律的に着陸中止する能力もあります」(オシリス・レックス プロジェクトマネージャー Rich Burnsさん)。

運用チームでは、着陸地点ナイチンゲールと予備地点オスプレイのさらなる「偵察」を来年1月から春まで行う予定だ。この運用が終わると、オシリス・レックスは8月に予定されている第1回サンプル採取のためのリハーサルに入る。2021年にはベンヌを出発し、2023年9月に地球に帰還する予定となっている。

(文:中野太郎)

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