西山さんと椛島さんがさそり座に新星を発見
【2013年6月6日 VSOLJニュース(299)】
九州の新天体捜索チーム・西山さんと椛島さんが6月3日、さそり座に新星を発見した。星間物質の影響で赤く光る古典新星とみられる。
VSOLJニュースより(299)
6月上旬の午後9時ごろになると、晴れていれば、南東の低い空にさそり座の1等星アンタレスが赤く光っているのが見えます。そのさそり座の尾の部分にあたる青白い星のシャウラ(Shaula = λ Sco)のすぐ北に、新星が発見されました。
新星を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、今年2月にケフェウス座に出現した新星(V809 Cep = Nova Cephei 2013)に次ぐ発見になります(参照:2013/2/4ニュース「西山さんと椛島さんがケフェウス座に新星を発見」)。
西山さんと椛島さんは6月3.6146日(世界時)に焦点距離105mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した2枚の画像から、11.1等の新天体をさそり座の中に発見しました。また、この直後の3.6728日には口径40cmの望遠鏡を用いて確認観測を行いました。お二人の観測によるこの天体の位置は以下のとおりです。
赤経: 17時33分59.43秒 赤緯:-36度06分21.6 秒(2000.0年分点) さそり座の新星の周辺星図
西山さんと椛島さんが5月17日と30日に撮影した画像には、この天体は13.4等以下で写っていませんでした。
この天体は、茨城県の清田誠一郎さんが6月3.589日に撮影した画像と、福岡県の高尾明さんが6月3.628日に撮影した画像にも写っていることが報告されました。また、宮城県の遊佐徹さんをはじめ、国内外の複数の観測者による確認観測では、この天体はひじょうに赤い色をしていることが報告されました。フランスのC. Builさんは、6月3.960日にこの天体の分光観測を行い、この天体がひじょうに赤い色をした天体であること、および強いHα輝線を示すことを報告しました。
これらの観測結果から、この天体は銀河面のガスやちり等の星間物質による影響で赤く見えている古典新星であると考えられます。
分光観測の結果から、この天体は、新星爆発による物質の膨張速度が比較的遅く(秒速1200km)、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。このタイプの新星の中には、ダスト形成による急速な減光を示すものが知られており、同じタイプの新星だった2月発見のケフェウス座の新星も、3月にダスト形成によると思われる減光が観測されました。今後の光度変化の様子などが注目されます。
さそり座の新星の位置
この天体(「さそり座の新星2013(2013)」)を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ステラナビゲータを起動後まず「ツール」メニューから「データ更新」を行い、新天体データを取得してください。
また、新しいデータや番組をオンラインで入手できる「コンテンツ・ライブラリ」では、新星をわかりやすく×印で表示するための「新星(マークで表示)」ファイルも公開しています。あわせてお楽しみください。