系外惑星のトランジットをX線で初観測

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【2013年7月30日 NASA

NASAと欧州の天文衛星が、系外惑星のトランジット現象を初めてX線でとらえた。系外惑星の大気や、それに及ぼす主星の影響について新たな理解を与えてくれる。


HD 189733系のイラストとX線像

HD 189733と、その周囲をわずか2.2日で回る惑星のイラスト図。図中画像はチャンドラがX線でとらえたHD 189733系。主星(中央)と、その伴星の赤色矮星(右下)。その下は無関係の天体。クリックで拡大(提供:X-ray: NASA/CXC/SAO/K.Poppenhaeger et al; Illustration: NASA)

2つのX線天文衛星、NASAの「チャンドラ」と欧州の「XMMニュートン」が、太陽系外の恒星の手前を、その星を公転する系外惑星が横切る「トランジット」をとらえた。X線でこの現象が観測されたのは初めてのことだ。

今回観測されたのは、こぎつね座の方向63光年彼方にあるHD 189733bだ。主星からの距離は太陽〜地球のわずか30分の1という木星サイズの「ホットジュピター」で、この種類の天体としてはもっとも近くにある。そのためしばしば研究対象となっており、先日もハッブル宇宙望遠鏡の観測で、系外惑星として初の色測定の成果が発表されたばかりだ(参照:2013/7/16「系外惑星の色を初測定 青色の巨大ガス惑星」)。

チャンドラとXMMニュートンが、HD 189733bが手前を横切るときの主星の減光をとらえたところ、可視光に比べてX線の減光が3倍も大きいことがわかった。これはHD 189733bが、可視光を通すがX線は通さない性質の外層大気を持っていることを示唆しており、Katja Poppenhaegerさん(ハーバード・スミソニアン天体物理学センター)らは研究チームではさらにデータを確認するという。

大きく広がった大気があるとすれば、それだけ主星からの紫外線やX線などの影響で大気を失いやすく、毎秒10万〜60万tの大気が流れ出ているとチームでは推算している。

また、主星には赤色矮星(暗く赤い星)のパートナーHD 189733Bも検出されている。2つの恒星は同時期に形成されたとみられるが、主星は自転が早く、強い磁場を保っており、X線放射が大きい。巨大な惑星による潮汐力もこうした「若作り」の要因では、とPoppenhaegerさんらは考えている。


ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、700個近い「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しています。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください(記事中の恒星HD 189733は「V452 Vul」という名前で登録されています)。

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