2014年 天文宇宙ゆく年くる年
若田さんがISSの「船長」に
2013年11月から国際宇宙ステーション(ISS)に滞在していた宇宙飛行士の若田光一さんが、2014年3月に「ISSコマンダー」に就任した。5月の地上帰還までクルーたちのまとめ役を務め、日本人初の「宇宙船船長」として脚光を浴びた。2015年には油井亀美也(ゆいきみや)さんが、初ミッションとなるISS長期滞在に臨む予定だ。
宇宙イベント盛りだくさんの夏
今年も各地でさまざまななイベントが開催された。夏には「SPACE EXPO 宇宙博 2014」を初めとして、宇宙をテーマとした現代美術展の開催や常設施設のオープンなどが首都圏であいつぎ、昨今の宇宙や星空への関心の高まりを感じさせた。
皆既月食と太陽の巨大黒点
天文現象では、やはり10月8日の皆既月食が大きな注目を集めた。今年最も地球に近づいて大きく見えた8月11日の月(いわゆるスーパームーン)や、11月5日の「後の十三夜」も多くの人が月を見上げるきっかけとなった。普段と大きく違わない姿でも、何かにかこつけて天体を眺めるというのも夜空の楽しみ方のひとつと言える。
月に対抗して太陽も、ということなのか(?)10月下旬には巨大黒点が出現した。実に24年ぶりという大きさで、太陽が1周してもまだ拡大なしではっきりと見えるほどだった。2012年の金環日食以来久々に日食めがねを取り出したという人も多かったことだろう。
幻の流星群をとらえた
アイソン彗星(C/2012 S1)を初めとする期待の彗星が次々と接近し「コメットイヤー」とも称された2013年だったが、2014年も、史上初の彗星着陸を果たした「フィラエ」(後述)はもちろんのこと、10月に大接近した火星とサイディングスプリング彗星(C/2013 A1)や年末年始のラブジョイ彗星(C/2014 Q2)など彗星の話題に事欠かなかった。
「彗星のお土産」である流星群については、興味深い観測成果があった。4月には日本の流星観測ネットワークにより「4月やぎ座α流星群」(仮称)が新たに発見された。5月のきりん座流星群や、58年前に大出現した12月のほうおう座流星群は、予測通りに突発的な出現を見せた。彗星そのものの調査はもちろん、地道な流星観測も彗星や太陽系の謎を探る手がかりとなる。
史上初の彗星着陸と「はやぶさ2」の旅立ち
2014年最大のトピックとなったのが、史上初の彗星着陸ミッションだ。欧州の探査機「ロゼッタ」は8月6日にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)に到着し、子機「フィラエ」は11月13日未明に彗星表面に着陸。彗星表面からの初めてのデータを送り届けてくれた。予定の着陸地から離れた日陰にいるため休眠モードに入ってしまったが、再度目覚めるよう祈りたい。母船は元気に探査を続けており、彗星の活動が活発になっていくにしたがってさらに新しい知見をもたらしてくれることだろう。
数億km彼方の探査機だけでなく、人類の英知を結集した地上の大望遠鏡も、未だかつて見ることのなかった景色を見せてくれる。2013年に本格稼働となったチリのアルマ望遠鏡は、まるで想像図かと見紛うほど鮮明に惑星誕生の現場をとらえた。これは試験観測画像だが、フル性能を発揮しての科学観測が行われるのが楽しみだ。米・ハワイでは、次の大型望遠鏡TMTの建設が始まった。
「これからの快挙に期待」といえば、小惑星探査機「はやぶさ2」。11月30日に予定されていた打ち上げは初代「はやぶさ」の注目度を引き継いで、もはや社会的関心事に。再三の延期のすえ、「はやぶさ2」は12月3日に無事地球を旅立った。しばらくは地球軌道付近を航行し、2015年末に地球スイングバイを行って小惑星1999 JU3に向かう軌道に乗る予定だ。
12月5日、火星有人飛行を見すえるアメリカが開発中の宇宙船「オライオン」が無人での試験飛行を実施。地球を2周する間に高度5800kmに到達し、打ち上げから4時間半後に大気圏に突入して初フライトを無事完了した。
2014年の訃報
- ジョン・ドブソン 氏(1月15日。98歳)
ドブソニアン望遠鏡の考案者 関連ニュース - ウィリアム・アシュリー・ブラッドフィールド 氏(6月9日。86歳)
オーストラリアのアマチュア天文家 関連ニュース - 小林悦子 氏(9月30日。88歳)
元・五島プラネタリウム解説員。日本初の女性プラネタリウム解説員として後進の指導でも功績 - 高橋栄四郎 氏(12月22日。86歳)
高橋製作所会長
改めてその業績を偲び、哀悼の意を表します。
2015年は皆既月食に惑星集合、最高条件のふたご群 探査機たちの活躍も
2015年注目の天文現象は、4月4日の皆既月食。皆既食が十数分ととても短いが、21時前後の見やすい時間帯なので多くの人が目にすることだろう。
年の前半には木星のガリレオ衛星の相互現象が起こるので、小口径の望遠鏡で見てみよう。また10月には、明け方の空で火星、木星、金星が接近し、月や水星と勢ぞろいするようすも見ることができる。最高の条件となる12月のふたご座流星群も、見逃せない夜になりそうだ。
2015年は探査機たちの活躍が期待される年でもある。3月ごろにはNASAの「ドーン」が準惑星ケレスに到達、7月には探査機「ニューホライズンズ」が初の冥王星探査を行う。年終盤には探査機「あかつき」が金星と再会し、軌道投入に再挑戦する見込みだ。
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