史上2個目、4重連星の中の惑星
【2015年3月9日 NASA】
私たちの太陽は孤立した星だが、多くの星は他の星と回りあう連星系を成しており、さらにその中に惑星を持つものもある。複数の“太陽”が存在する環境が惑星にどのような影響を与えるのかを研究しているLewis Robertsさん(NASAジェット推進研究所)らは、米・パロマー天文台での観測から、すでに惑星が見つかっている2つの連星系に、それぞれさらにもう1つ星が存在することをつきとめた。
くじら座の方向およそ180光年彼方のHD 2638には、主星のすぐそばをわずか3日周期でめぐる巨大ガス惑星がある。0.7光年離れた伴星のほかにもう1つの伴星が28auという至近距離に見つかり、3重星であることがわかった。ガス惑星は、この伴星の重力によって主星の近くに押しやられた可能性があるという。
136光年彼方のおひつじ座30番星は新たな星が見つかったことで、2重星がさらにお互いを回りあうという典型的な4重星であることがわかった。惑星を持つ4重星としては史上2個目の発見だ。
この4重星に含まれる、木星の10倍の重さの巨大ガス惑星は生命に適した環境ではなさそうだが、もしこの惑星に降り立ったら、小さめの太陽(主星)が空をめぐり、昼間の空に2つのとても明るい星が見えるだろう。1つは今回新たに見つかった主星の伴星で、もう1つを望遠鏡で見ると、1670au離れたもう一組のペアであることがわかるかもしれない。主星の伴星は23auしか離れていないが、HD 2638の場合と異なり、335日周期という惑星の軌道はこの伴星の影響を受けていないようだ。
この違いはどうやって生まれるのかははっきりわかっておらず、連星が惑星の形成段階に及す影響についてのさらなる解明が待たれる。
ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示
天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、系外惑星が発見された恒星の位置を星図に表示することができます。
- 「ステラナビゲータ10」をご利用の方は、まず「ツール」メニューからデータを更新し、「恒星」ダイアログで「系外惑星をもつ恒星」の「表示」「名称」をオンにします。「HD 2638」と「おひつじ座30番星」(「30 Ari B」と表示)を検索してください。
- 9以前のバージョンでは、「コンテンツ」メニュー→「コンテンツ・ライブラリ」から追加天体データ「系外惑星」をダウンロードして、「天体」メニュー→「追加天体」で表示をオンにしてください。
〈参照〉
- NASA: Four-fathers: New exoplanet discovery part of a quadruple-star system
- The Astronomical Journal: Know the Star, Know the Planet. III. Discovery of Late-Type Companions to Two Exoplanet Host Stars 論文
〈関連リンク〉
- 系外惑星エンサイクロペディア: http://exoplanet.eu/
- 星ナビ.com 金井三男のこだわり天文書評:
〈関連ニュース〉
- 連星中の系外惑星:
- 2014/10/31 - 連星系で観測された、惑星誕生現場へのガス供給
- 2014/08/01 - 互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見
- 2014/07/04 - 連星系の中に地球型系外惑星
- 2014/02/04 - 2つの太陽をもつ惑星は、元の場所から動いてきた
- 2014/07/04 - 連星系の中に地球型系外惑星
関連記事
- 2024/09/11 ホットジュピターの内側で、公転が大きく変動するミニ海王星
- 2024/07/29 「灼熱の土星」型の系外惑星で大気から水蒸気の証拠を検出
- 2024/06/18 想定外の軌道を持つ「ミニ海王星」を発見
- 2024/05/30 ローマン宇宙望遠鏡の系外惑星観測用コロナグラフが準備完了
- 2024/05/27 宇宙生命探査の鍵となる「太陽系外の金星」を発見
- 2024/05/21 超低温の赤色矮星で2例目、地球サイズの系外惑星を発見
- 2024/04/18 植物の排熱が地球や系外惑星に及ぼす影響
- 2023/12/05 共鳴し合う6つ子の系外惑星
- 2023/08/02 蒸発する惑星が引き起こす「しゃっくり」
- 2023/07/28 巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
- 2023/07/27 次々見つかる浮遊惑星、天の川銀河に1兆個以上存在か
- 2023/07/14 公式ブログ:ペガスス座51番星系で新星座を考える
- 2023/05/25 火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/04 「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す
- 2022/12/22 低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
- 2022/12/20 地球型惑星の大気は強い紫外線に負けない
- 2022/10/13 軌道周期が51分の激変星
- 2022/09/22 2022年10月 シリウスの伴星Bが最遠