太陽系の回転速度をVERAが精密に測定
【2015年3月23日 国立天文台VERA】
鹿児島大学のRoss A.Burnsさんらの研究チームが国立天文台VERA(注1)を用いて行った水メーザー(注2)の観測から、天の川銀河の中を太陽系が回転する速度がより精密に測定された。
研究では、重い星が生まれる領域「IRAS 20143+3634」(はくちょう座)での水メーザー放射を2008年12月から2010年12月にかけて複数回観測し、この領域までの距離(8870光年)や固有運動を算出した。
また、この領域が銀河の中を回転する速度(km/秒)は、(27.3±1.6) × 銀河中心からの距離(kpc:注3)と算出された。これは国際天文学連合(IAU)での従来値より約1割大きい。この領域と同じ円周上を周回している太陽系も同じ速度で回転していると見なすことができる。太陽系の回転半径を8.5kpcとすると、その回転速度は秒速232kmになる。
- 注1:「VERA」 遠距離間の望遠鏡ネットワークで天体の距離と運動を高精度に測定するプロジェクト
- 注2:「水メーザー」 水分子で増幅されたマイクロ波放射
- 注3:「キロパーセク」 1キロパーセク(kpc) = 約3262光年
〈参照〉
- 国立天文台VERA: 大質量星形成領域 IRAS 20143+3634 の観測から太陽円の銀河回転角速度を精密に測定
- Publications of the Astronomical Society of Japan: VLBI observations of H2O maser annual parallax and proper motion in IRAS 20143+3634: Reflection on the Galactic constants 論文
〈関連リンク〉
- 国立天文台VERA: http://veraserver.mtk.nao.ac.jp/
〈関連ニュース〉
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