高速惑星形成を示唆する、原始惑星系円盤中の大きな塵の塊
【2016年3月22日 マックス・プランク天文学研究所】
450光年彼方にある若い恒星「おうし座HL星」では、以前行われたアルマ望遠鏡による観測で、周囲に広がる原始惑星系円盤内に塵の環やレコード盤の溝のように見える複数のすき間がとらえられていた(参照:アストロアーツニュース「視力2000!アルマが見た惑星誕生の現場」)。
そして今回、アメリカ国立電波天文台のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)による最新の観測画像から、円盤の最も内側の明るい環に大きな塵の塊が発見された。その質量は地球の3倍から8倍ほどある。「この塊は惑星の卵のように見受けられます。今後数百万年かけて、完全な惑星へと成長するでしょう」(独・マックス・プランク天文学研究所 Thomas Henningさん)。
惑星形成に関する従来のモデルでは、塵とガスからなる原始惑星系円盤内で塵の粒が互いにくっつき合って大きな天体が形成され、それが最終的に惑星となるという過程が考えられているが、時間がかかりすぎるという問題がある。円盤中の塵やガスに与えられた時間は、若い中心星からの強い放射によって吹き飛ばされてしまうまでの1000万年程度しかなく、材料がなくなれば惑星形成は完全に止まってしまう。
VLAによる最新画像は、超高速の惑星形成を見せてくれているようである。円盤内のガスの流れによって塵が密集し、その塵の濃い領域で惑星形成が通常よりはるかに速く進むのだ。「10年前に行ったシミュレーションで、そのような急速の惑星形成過程が初めて示されました。そして今回初めて、塊を形成する現場と思われる高密度の塵の環を実際に詳細に見せてくれたのです」(同研究所 Hubert Klahrさん)。
おうし座HL星を取り巻く円盤の詳細なモデル作りや、巨大な塊が本当に今後大きく成長するのかどうかについては、さらなる研究と分析が進められている。
〈参照〉
- マックス・プランク天文学研究所: Speedy planet birth - Astronomers observe a clump of dust in the disk around star HL Tauri
〈関連リンク〉
- アメリカ国立電波天文台: https://science.nrao.edu/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
〈関連ニュース〉
- 2015/11/20 - 世界初、形成途中の惑星を直接撮像
- 2015/06/18 - すばる、原始惑星系円盤に2つ目のリングギャップ構造を発見
- 2014/11/07 - 視力2000!アルマが見た惑星誕生の現場
- 2014/08/01 - 互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見
関連記事
- 2024/10/09 ガス円盤のうねりが示す“原始惑星の時短レシピ”
- 2023/10/10 アルマ望遠鏡が惑星形成の「最初の一歩」をとらえた
- 2023/07/28 巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
- 2023/07/13 塵の塊が衝突するだけでは惑星の種にならない
- 2023/06/30 惑星が誕生するタイミングをとらえる
- 2023/04/03 木星と土星の共鳴が鍵、地球型惑星と小惑星帯形成の統一シナリオ
- 2023/03/23 水蒸気で囲まれた原始星に、太陽系の水が経てきた歴史を見る
- 2023/01/17 原始惑星系円盤の内側に隠れていた大量のガス
- 2022/08/26 原始惑星系円盤の一酸化炭素は氷に隠れていた
- 2022/08/18 原始惑星系円盤の内外で異なる物質組成
- 2022/08/15 形成中の惑星を取り巻く円盤からガスを初検出
- 2022/04/12 太陽系の惑星を急成長させた前線
- 2022/04/08 太陽系と異なるプロセスで形成中の惑星
- 2022/03/11 原始惑星系円盤でジメチルエーテルを初検出
- 2022/01/20 星系への侵入者、原始惑星系円盤を乱す
- 2021/12/22 原始惑星系円盤内のダストが散逸するまでの時間
- 2021/12/16 「天空の降灰」が惑星を咲かせている可能性
- 2021/11/25 塵粒から巨大ガス惑星まで、成長の道筋を解明
- 2021/11/18 移動する惑星が原始惑星系円盤にリングを作る可能性
- 2021/10/25 地球型惑星や水星型惑星の形成につながる中心星の組成