「はやぶさ2」着陸は2月18日ごろ、リュウグウの地名も承認

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「はやぶさ2」の小惑星リュウグウへの着陸が2月18日の週に行われることになった。またリュウグウの主な地形に「ウラシマクレーター」などの地名が命名された。

【2019年1月10日 JAXA

1月8日の記者説明会で、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに着陸して表面のサンプルを採取する「第1回タッチダウン(TD1)」が2月18日の週に行われることが発表された。

着陸地点は、リュウグウの赤道リッジ上にある「L08」という着陸候補エリア(100m四方)の中から、岩塊が少ない「L08-B」という領域(直径約20m)がこれまで最有力候補とされてきた。運用チームでは、これまでに3回行われた着陸リハーサルで「L08-B」周辺の詳しい画像を撮影して安全性などの検討を重ね、直径60cm以上の岩が最も少ない領域として、「L08-B1」と「L08-E1」という2か所に着陸候補地を絞り込んだ。

L08
「はやぶさ2」の着陸候補地点「L08」。緑の四角形は次の拡大図の位置を表す(提供:JAXA、東大など、一部改変)

着陸候補地の拡大図
着陸候補地点の最有力とされていた「L08-B」(白い円)の中にある着陸候補地「L08-B1」(赤)とそのそばにある着陸候補地「L08-E1」(緑)の拡大図。赤やピンクの楕円は岩塊を、その周囲のグレーの部分は岩塊が機体に接触するリスクがある領域を表し、青色の領域がサンプラーホーンを接地できる場所を示している。左下は「はやぶさ2」の機体サイズを表す。「TM」は10月25日に投下したターゲットマーカーの位置(提供:JAXA)

どちらの候補領域も、昨年10月25日の第3回着陸リハーサルで投下したターゲットマーカーから15m以内の場所にあるため、本番の着陸では新たなターゲットマーカーは使わず、10月25日のターゲットマーカーの位置を追跡することで「はやぶさ2」の誘導を行うとのことだ。今後の最終検討で、どちらの候補地に降りるかを決定するという。

また、「はやぶさ2」運用チームでは、太陽系天体の地名を管理している国際天文学連合(IAU)の惑星系命名ワーキンググループに対して、リュウグウの表面にある13か所の主要な地形の名前を昨年10月12日に提案した。この提案内容は一部修正の上、同ワーキンググループによって12月に正式に承認された。

太陽系天体の地名は、天体ごとに「テーマ」を決め、それに沿った命名が行われる。リュウグウの地名については「子供たち向けの物語に出てくる名称」を名付けることに決まった。今回「はやぶさ2」チームが提案して承認された地名は以下の表の通りだ(注:日本語表記はJAXA発表資料による)。

「そろばん玉」形のリュウグウの張り出し部分(赤道リッジ)は「リュウジン」、赤道にあるリュウグウ最大のクレーターは「ウラシマ」、南極付近にある大きな岩塊は「オトヒメ」と名付けられている。

名称 説明 元になった物語 由来
リュウジン尾根 赤道リッジ 浦島太郎(日本) 乙姫の父である龍神から
ウラシマクレーター リュウグウ最大のクレーター 浦島太郎(日本) 亀を助けた漁師
サンドリヨンクレーター 赤道リッジの外にあるクレーターで最大のもの シンデレラ(フランス) シンデレラのフランス語
コロボッククレーター 赤道リッジ上にあるクレーターの典型 コロボック(ロシア) 家から逃げ出した小さな丸パン
ブラボークレーター 赤道リッジ上にあるクレーターの典型 ブラボーと巨人(オランダ) 巨人に勝利した勇敢な若者
キンタロウクレーター リュウグウで5番目に大きいクレーター 金太郎(日本) 足柄山で育った怪力の男の子
モモタロウクレーター リュウグウで4番目に大きいクレーター 桃太郎(日本) 桃から産まれて鬼と戦った少年
キビダンゴクレーター リュウグウで6番目に大きいクレーター 桃太郎(日本) 桃太郎が仲間に分け与えた食べ物
トコヨ地溝 リュウグウ最大の溝状凹地 浦島太郎(日本) 常世の国、海のはるか彼方にある理想郷
ホウライ地溝 リュウグウで2番目に大きい溝状凹地 浦島太郎(日本) 蓬莱、海中にある理想郷
カタフォ岩塊 リュウグウの本初子午線の基準となったボルダー ケイジャン民話(アメリカ) 辿った道を見失わないよう印をつけた賢い少年
オトヒメ岩塊 リュウグウ最大のボルダー 浦島太郎(日本) 竜宮城に住み、浦島太郎をもてなし玉手箱を送った女性
エジマ岩塊 リュウグウ形成史の鍵を握るボルダーのひとつ 浦島太郎(日本) 浦島太郎が亀を助け、竜宮城へ旅立った磯(絵島が磯)

リュウグウの地名
リュウグウの地名。着陸候補地点「L08」は「ブラボークレーター」のやや西の経度200度・緯度0度付近にある。「トリトニス」は探査ローバー「MINERVA-II1」の、「アリスの不思議の国」はドイツ・フランスのローバー「MASCOT」の着陸地点に付けられた非公式のニックネーム。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA、以下同)

リュウグウの地名
各経度から見たリュウグウの地名。(左上)経度0度、(右上)経度90度、(左下)経度180度、(右下)経度270度

JAXA研究総主幹の久保田孝さんは、「合運用期間中の検討によって着陸地点周辺の様子がかなり詳細にわかり、同時に難しさもわかってきました。慎重に、しかし大胆にタッチダウンを進めたいと思っています」とコメントしている。

記者説明会の動画(提供:JAXA)

(文:中野太郎)

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