「はやぶさ2」が持ち帰ったリュウグウの花吹雪

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探査機「はやぶさ2」が行った小惑星リュウグウの観測を様々なスケールで分析することにより、回収したサンプルが同小惑星を代表する粒子であると判明した。

【2022年2月21日 JAXA宇宙科学研究所

探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウの表面からサンプルを回収して地球に持ち帰ることに成功したが、得られた粒子はリュウグウを代表する試料と本当に言えるだろうか。この疑問に答えるため、あらゆるスケールでの分析がなされた。

「はやぶさ2」は大きさ1kmのリュウグウの全体観測を実施し、小型ローバー「MINERVA-II1」は表面を跳ね回り多地点を観測している。また、表面へのタッチダウン時には小型モニタカメラ(CAM-H)などがセンチメートル、ミリメートルサイズの粒子をとらえ、回収したサンプルは原子レベルまで分析されている。

探査機が着陸した際に、サンプラーホーンから弾丸を発射することでサンプルを回収するというのが「はやぶさ2」の計画だった。まず、この装置はうまく作動していただろうか。上昇するサンプラーホーンの下部から飛び散った粒子はCAM-Hの映像にとらえられており、その動きは地上での弾丸発射実験や数値シミュレーションで予測されるものとよく一致した。確かに弾丸は放たれ、それによって5gのサンプルを採取していたようだ。

着地後のCAM-H画像
(左・中央)1回目の着地2秒後、3秒後のCAM-H画像。サンプラホーン下部から、矢印をつけた粒子がCAM-Hに向かって飛んでくるのがわかる。(右)2回目の着地2秒後のCAM-H画像。白矢印の粒子はロケット結合リング(打ち上げロケットに結合するためのリング状構造体)に映る影からセンチメートルサイズであることがわかる。画像クリックで拡大表示(提供:JAXA、以下同)

では、そのサンプルはリュウグウのどこにでもある典型的な物質だったのだろうか。ここでもCAM-Hの映像が鍵となった。「はやぶさ2」が着地を終えて上昇する際には、ガス噴射によってリュウグウ表面の粒子が花吹雪のように舞い上がっていた。その映像から67個の粒子を検出して分析したところ、凹凸のはっきりした粒子と、凹凸が少なく滑らかな粒子の2種類あることがわかった。「はやぶさ2」や着陸機「MASCOT」も表面の岩石について同じ傾向をとらえているので、着地点付近の粒子はリュウグウの普通の岩石とよく似ているのだと言える。

探査機上昇中のCAM-H画像
1回目の着地後、探査機上昇中のCAM-H画像。(左)白丸内の粒子が画面右から左に回転しながら移動し、(右)1秒後の画像で平坦な形状を見せている

さらに、上昇時の花吹雪には、花びらのように平たく細長い粒子が67粒のうち17粒存在することも明らかになった。このような粒子は着地直前の映像でも確認でき、ローバーが撮影した画像でも薄い破片が取れそうな形で割れた岩石が見つかっている。平たく細長い粒子もリュウグウの表面を代表する粒子だと言えそうだ。同じ特徴を持つ粒子は、地球に持ち帰られたサンプルの中にも存在することが確認されている。

リュウグウ表面とサンプル粒子
(左)MINERVA-II1 Rover-1A「イブー」が撮影したリュウグウ表面。イブー自身の影も中央に映る。左上に平板状に割れそうな岩が見える。(右)2回目の着地で採取された1cm級の粒子C0002

これらの結果から、回収されたサンプルがリュウグウを代表する粒子であると確認できた。この粒子を分析する事で、リュウグウの全体像が明らかになると期待される。太陽系の起源や進化、地球への水や有機物の供給に関わる問いの答えが得られるかもしれない。

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