チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星、地球と異なる水の起源

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欧州探査機「ロゼッタ」の観測により、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の水が地球のものとは異なることがわかった。地球の水がどこから運ばれてきたか、その起源に関して新たな議論を呼び起こしそうだ。

【2014年12月12日 ヨーロッパ宇宙機関

46億年前に生まれたころの地球はひじょうに高温で、水が存在したとしてもすべて蒸発してしまったと考えられている。現在地表を広く覆う海の水は、冷えた後の地球に衝突した彗星や小惑星などの小天体がもたらしたという説が有力だ。ただし、彗星と小惑星のどちらが主な水の供給源だったかといった詳しいことはよくわかっていない。

その問題に大きな手がかりをもたらしてくれると期待されるのが、今年8月からチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P:以降CG彗星)の観測を行っている探査機「ロゼッタ」(ヨーロッパ宇宙機関)だ。CG彗星から噴き出す水のデータを分析したところ、地球の水と大きく異なることが明らかになった。

水の起源が同一かどうかを知るためには、水に含まれる「重水素/水素」比が測定される。普通の水素より中性子1個分だけ重い重水素の割合が同じであれば、同じ起源を持つと見なすことができる。CG彗星の水は、この重水素比が地球の水の3倍も大きかったのだ。

太陽系の天体における重水素の比率
太陽系の天体における重水素の比率。木星族彗星は地球に比較的近い傾向を見せていたが、CG彗星はそれに当てはまらない。クリックで拡大(提供: Data from Altwegg et al. 2014 and references therein)

これまでに調査が行われた11個の彗星における重水素比はまちまちだが、唯一地球と同じ結果が出たハートレー彗星(103P)と同じ「木星族彗星」であるCG彗星が、大きく異なる数値を見せたのは興味深い。木星族彗星とは太陽からもっとも離れたときに木星軌道付近に来る短周期彗星の総称で、海王星の外側の「カイパーベルト」で形成されたものが内側に移動してきたものと考えられている。だが今回の結果からすると、木星族彗星が生まれた場所は思ったよりもばらばらなのかもしれないという。

太陽系の模式図
太陽系の模式図。「木星族彗星」は「カイパーベルト」(左)でできたものが太陽系の内側に引き寄せられたもの、「オールト雲彗星」は天王星や海王星付近でできたものが太陽系の彼方に追いやられたものと考えられている(右)。距離の比は正確ではない(提供: ESA)

今回の分析結果を発表したKathrin Altweggさんは、「木星族彗星の水が必ずしも地球の水に近い重水素比ではないことがわかりました。またこの結果から、地球の水の主な起源は小惑星だったという説がより有力になりました。」と語っている。

11月20日にロゼッタが撮影したチュリュモフ・ゲラシメンfコ彗星
水を含むガスや塵を噴き出すチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。11月20日に撮影した4枚の画像をつなげたため、ややゆがんで見える(提供: ESA/Rosetta/NAVCAM - CC BY-SA IGO 3.0)


チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の位置と軌道

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、彗星の任意の日時における位置を表示することができます。

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